むちうちの治療打ち切りを打診されたら応じるべき?打診後の具体的な対応方法

むちうちの治療打ち切りを打診されたら応じるべき?打診後の具体的な対応方法
本記事の監修弁護士:菅原 啓人

本記事の監修弁護士:菅原 啓人

2021年1月弁護士登録(現在、東京弁護士会所属)。
都内の法律事務所にて、交通事故案件を中心に、労働事件、不貞、離婚事件等の一般民事事件を担当。
2024年10月ライトプレイス法律事務所に入所。
趣味は、野球観戦、映画鑑賞、旅行、スイーツ巡り等。

この記事のまとめ

交通事故でむちうちになった後、保険会社から

「そろそろ治療を終わりにしてほしい」「治療費の支払対応を終了したい」

と打診(連絡)を受けるケースは少なくありません。

ただし、これは保険会社が任意一括対応(病院への治療費支払い)を終了したいという意向であって、医師が治療終了(症状固定・治癒)を判断したわけではありません

症状が残っているのに打ち切りに応じてしまうと、その後の通院で自己負担が生じる可能性があるほか、通院の継続状況によっては、慰謝料の算定や後遺障害等級認定に影響するリスクもあります。

打診を受けたときにまず行うべきは、現在の痛みやしびれ、日常生活で困っていることを主治医に正確に伝え、治療継続が必要かどうかの判断を仰ぐことです。保険会社とのやり取りや対応に不安がある場合は、早めに弁護士へ相談することも有効です。

この記事では、治療打ち切りの打診を受けたときの具体的な対応方法と、応じてしまった場合のリスクをわかりやすく解説します。

目次

むちうちとはどんなケガか?なぜ治療が長引くのか

むちうちの主な症状

むちうちとは、交通事故の衝撃で首に急激な力が加わり、首まわりの筋肉・靱帯などを痛めることで起こる症状の総称です。正式には「頸椎捻挫(けいついねんざ)」や「外傷性頸部症候群」と呼ばれることもあります。

むちうちで多く見られる症状は、次のとおりです。

  • 首・肩・背中の痛みやこり
  • 頭痛やめまい
  • 手足のしびれや違和感
  • 倦怠感・疲れやすさ
  • 集中力の低下や睡眠障害

※事故の状況や負担のかかり方によっては、首以外にも痛みや違和感が出ることがあります。

むちうちの症状について詳しくは、以下の記事で詳しく解説しておりますので、併せて御覧ください。

治療が数ヶ月以上かかることが少なくない理由

むちうちの治療が長引きやすい理由の一つは、レントゲンやMRIなどの画像検査で、骨折のような明確な損傷所見が確認できない場合があることです。見た目に分かる異常が少ないため、症状や経過を踏まえながら、慎重に治療方針が決められることが多くなります。

また、症状の回復には個人差が大きく、事故から数週間で落ち着く方もいれば、数ヶ月以上通院が続くケースもあります。事故直後は軽く感じても、時間が経ってから痛みやしびれが強くなることもあるため、焦って治療を終わらせないことが大切です。


保険会社が治療の打ち切りを打診してくる背景

「症状固定」とは何か

保険会社が治療の打ち切りを打診する際によく使われる言葉が「症状固定」です。

症状固定とは、一般にこれ以上治療を続けても医学的に大きな改善が見込めない状態になったことを指します。

症状固定とされると、加害者側任意保険会社の任意一括対応(病院への治療費の支払い対応)が終了することが多く、以後の損害は「後遺障害が残ったかどうか」を前提に整理されていきます。後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定を経て、後遺障害慰謝料や逸失利益などを請求していくことになります。

重要なのは、症状固定かどうかを判断するのは医師であり、保険会社ではないという点です。


保険会社の打診は医学的判断ではない

保険会社が治療の打ち切りを打診してくる背景には、治療費の支払いを含む対応を早期に整理したい(早期解決・支払管理をしたい)といった事情があります

目安として、事故から3〜6ヶ月頃に「そろそろ症状固定では」などの打診を受けることがありますが、これは保険会社側の運用上の目安であり、基本的にあなたの症状を医学的に診断した結果ではありません

「そろそろ治療を終わりにしてほしい」「症状固定にしてほしい」と連絡が来ても、症状が残っているのであれば、すぐに応じる必要はありません


治療打ち切りを打診されたときの3つの対応方法

対応方法① 症状を正確に記録して主治医に伝える

打診を受けたら、まず現在の症状を整理し、主治医に正確に伝えることが大切です。「保険会社から治療終了の打診があったが、まだこういう症状がある」と具体的に説明しましょう。

  • 長時間座っていると首が強く痛む
  • 朝起きると頭痛や吐き気がある
  • 手にしびれが残っている
  • 雨の日に症状が悪化する

    上記のように、日常生活への支障を具体的に伝えることが重要です。

    症状を曖昧に伝えると、医師も「改善している」と受け取ってしまう可能性があります。後遺障害の認定にも影響するため、遠慮せず正確に伝えましょう。


    対応方法② 主治医の治療継続の意見を確認する

    症状が続いている場合は、主治医に「まだ治療が必要か」を明確に確認してください。

    医師が治療継続の必要性を認めている場合は、保険会社に対してその旨を伝えることができます。

    ただし注意が必要なのは、保険会社は医師の判断を覆すことはできませんが、任意一括対応を終了することはあります。

    その場合でも、「健康保険を使って通院を継続する」、「自費で通院し、後に損害として請求する」「被害者請求を行う」といった選択肢がありますので、打ち切り=治療が絶対にできなくなる、という意味ではありません。


    ③ 弁護士に相談して交渉を任せる

    保険会社とのやり取りに不安を感じる場合や、打ち切りの打診が繰り返される場合は、弁護士への相談を検討してください。

    弁護士が代理人として交渉に入ることで、

    • 不当な早期打ち切りを防ぎやすくなる
    • 治療継続の根拠を整理して主張できる
    • 後遺障害申請まで見据えた戦略が立てられる

    といったメリットがあります。

    また、自動車保険に付帯している弁護士費用特約を利用すれば、自己負担なく依頼できるケースも多くあります。

    まずはご自身が加入されている任意保険の内容を確認してみましょう。


    打ち切りに応じるとどうなるか

    治療費が自己負担になるリスク

    保険会社が提示する打ち切り日以降も治療を続ける場合、その治療費は原則として自己負担になります。

    健康保険を利用すれば自己負担は3割に抑えられますが、通院が長引くほど負担額は積み重なります。

    症状が残っているにもかかわらず打ち切りに応じてしまうと、本来相手方保険で補償されるべき治療費を自分で支払うことになりかねません。


    慰謝料・後遺障害認定への影響

    実務上、治療終了日が「症状固定日」と扱われることが多いため、早期に打ち切りに応じると、慰謝料算定期間が短くなります

    その結果、入通院慰謝料が減額される可能性があります。

    また、後遺障害認定では「通院期間」「通院頻度」「医学的経過の整合性」などが重視されます。

    治療期間が極端に短い場合、

    十分な治療を受けていないのではないか

    症状が継続していたとはいえないのではないか

    と評価されるリスクがあります。

    症状があるにもかかわらず打ち切りに応じることは、後遺障害認定の面でも不利になり得ます。


    症状が残った場合は後遺障害として申請できる

    症状固定後もむちうち症状が残っている場合、後遺障害として申請することが可能です。

    後遺障害が認定されると、以下の費用を請求できる可能性があります。

    • 後遺障害慰謝料
    • 逸失利益(将来得られたはずの収入の減少分)

      ただし、後遺障害認定を受けるためには

      • 医師作成の後遺障害診断書
      • 適切な通院経過
      • 症状の一貫性

      などが重要になります。

      後遺障害等級の申請方法や必要書類については、以下も併せてお読みください。


      まとめ|打ち切り打診には慎重に対応する

      保険会社からの治療打ち切りの連絡は、任意一括対応(治療費の支払対応)を終了したいという意向として伝えられることが多く、医師が治療終了を判断したことと同じではありません。症状が続いているのであれば、すぐに応じる必要はありません。

      大切なのは、主治医に現在の症状を正確に伝え、治療継続の必要性について確認してもらうことです。保険会社とのやり取りに不安がある場合は、弁護士に相談することで、治療継続の方針整理や交渉窓口の一本化などにより状況を改善できる可能性があります。打ち切りに安易に応じてしまう前に、早めに専門家の意見を聞くことをおすすめします。


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