
本記事の監修弁護士:菅原 啓人
2021年1月弁護士登録(現在、東京弁護士会所属)。
都内の法律事務所にて、交通事故案件を中心に、労働事件、不貞、離婚事件等の一般民事事件を担当。
2024年10月ライトプレイス法律事務所に入所。
趣味は、野球観戦、映画鑑賞、旅行、スイーツ巡り等。
交通事故による腰痛は、単なる筋肉痛とは異なります。事故の衝撃により腰椎や椎間板、周辺筋肉に損傷が生じ、治療期間が長期間に及ぶことがあります。自身の腰痛の治療においては、整形外科での専門的な診断が重要で、MRIやCT検査による画像診断、理学療法、薬物療法などを組み合わせた総合的なアプローチが必要です。
なお、その慰謝料は通院期間に基づいて計算され、3ヶ月の治療で弁護士基準なら約53万円、6ヶ月なら約89万円が目安となります。腰痛から後遺障害が残る可能性もあるため、症状固定まで継続的な治療が重要で、保険会社から早期の治療終了を促されても医師の判断を優先してください。腰痛での慰謝料請求では、交通事故に詳しい弁護士へ相談をし、サポートを受けることがベストです。
交通事故による腰痛は見過ごせない深刻な症状
交通事故による腰痛は、日常的な腰痛とは異なり、事故の衝撃によって腰椎や椎間板、神経、筋肉などに損傷が生じることがあります。痛みが慢性化しやすく、後遺障害に繋がるおそれもあるため、軽視せずに正確な診断と継続的な治療を受けることが重要です。
交通事故による腰痛の特徴
強い衝撃による複合的な損傷
交通事故の衝撃は強力で、瞬時に体へ大きな負担がかかります。そのため、腰痛も単なる筋肉痛ではなく、腰椎や椎間板、靱帯、神経など多くの部位に複合的なダメージが生じることが珍しくありません。
症状が遅れて現れることも
事故直後はアドレナリンが分泌されているため、痛みを感じにくいことがあります。しかし、数日後から痛みが増し、1週間を過ぎた頃に本格的な症状が現れるケースも多く見られます。軽い違和感でも、早めに医療機関を受診することが大切です。
治療は整形外科での精密検査から
医師による診断がカギ
交通事故で腰痛を感じたら、まずは整形外科を受診しましょう。整骨院や接骨院では診断書を発行できず、保険会社との交渉や慰謝料請求の際に不利になることがあります。また、整形外科を受診した際には以下のような検査をしてもらうことをおすすめします。
整形外科での主な検査内容
- X線(レントゲン)検査:骨の異常(骨折していないか、など)を確認する
- MRI検査:椎間板や神経の状態を確認する
- CT検査:骨に発生した細かい損傷を検出する
- 神経学的検査:しびれや麻痺の有無を調べる
整骨院・接骨院の併用は慎重に
整形外科の治療と併用して整骨院を利用する場合は、必ず医師の指示を受けてからにしましょう。施術内容や通院記録は詳細に残しておくことが、後の慰謝料請求に役立ちます。
保険会社からの治療打ち切りの提案に注意
交通事故による腰痛は、画像診断で異常が見つかりにくいケースも多くあります。そのため、保険会社から次のような理由で早期の治療打ち切りを提案されることがあります。
- 「事故から3ヶ月経過しているので、もう十分でしょう」
- 「画像所見がないので、異常は認められません」
- 「これは加齢による痛みではないですか?」
- 「日常生活に支障がないなら、治療は不要です」
しかし、これらの意見は医学的な判断ではなく、あくまで保険会社の都合によるものです。治療の必要性については、必ず医師の判断を最優先してください。
不安がある場合は、交通事故案件に詳しい弁護士に相談することで、治療継続の正当性を保険会社に主張しやすくなります。
腰痛治療における慰謝料は、使用する基準と治療期間によって大きく異なる
慰謝料は通院期間に応じて算定され、使用される基準によって支払額が大きく異なります。主に「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判基準)」の3つが存在し、なかでも弁護士基準は最も高額な算定となります。
以下は、交通事故による腰痛治療における通院期間別の慰謝料目安を、弁護士基準に基づいて示したものです。
通院期間 | 弁護士基準の慰謝料目安 |
---|---|
3ヶ月 | 約53万円 |
6ヶ月 | 約89万円 |
9ヶ月 | 約116万円 |
12ヶ月 | 約138万円 |
※自賠責基準の算出は、実通院日数と実通院期間(治療開始日から終了日までの日数)のいずれか少ない方に4300円を掛けて計算されます。
計算根拠について
自賠責基準
慰謝料は原則1日あたり4,300円。通院日数または通院期間×2のいずれか少ない方の日数に4,300円を乗じて算出されます。
弁護士基準
過去の判例をもとに日弁連の「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(いわゆる赤い本)」に準拠しており、通院日数や頻度、症状の重さなども加味され、実務上の相場は通院1ヶ月につき15〜30万円程度とされています。
弁護士基準で請求することで、慰謝料が自賠責基準より数十万円単位で増額されることも少なくありません。 そのため、正当な補償を求める場合には弁護士への相談を早めに検討することが重要です。
交通事故における慰謝料算定の基準については以下の記事でも詳しく解説しています。

後遺障害が残った場合の補償
症状が長引き、治療を継続しても回復しない場合は、後遺障害として等級認定されることがあります。
等級 | 内容 | 慰謝料目安 |
---|---|---|
14級9号 | 神経症状が残る(軽度) | 約110万円 |
12級13号 | 頑固な神経症状が残る | 約290万円 |
11級7号 | 脊柱に変形を残す | 約420万円 |
等級認定を受けるには、画像所見、医師の意見、日常生活への影響などの客観的資料が必要です。
後遺障害等級については、以下の記事もご参考ください。

弁護士に相談すべきタイミング|腰痛だからこそ慎重な対応を
交通事故での腰痛は、画像所見に現れにくく、症状も主観的なため、保険会社との交渉が難航するケースが非常に多いのが実情です。以下のような状況に該当する場合は、早めに弁護士への相談を検討してください。
- 保険会社との交渉がうまくいかない
- 腰痛の痛みや可動域の制限は、レントゲンやCTなどで異常が出ないことも多く、保険会社から「軽症扱い」されがちです。 このような場合、医学的知見に基づいた主張の整理や証拠収集を行う弁護士の支援が非常に有効です。
- 腰痛の痛みや可動域の制限は、レントゲンやCTなどで異常が出ないことも多く、保険会社から「軽症扱い」されがちです。 このような場合、医学的知見に基づいた主張の整理や証拠収集を行う弁護士の支援が非常に有効です。
- 治療の打ち切りを強く迫られている
- 保険会社が「3ヶ月治療したならもう十分でしょう」と一方的に打ち切りを迫るケースがあります。 腰痛は治療期間が長期化しやすいため、医師の判断に基づいて継続すべきケースも多くあります。弁護士は治療継続の正当性を保険会社に主張し、早期打ち切りを防ぐ役割を果たします。
- 保険会社が「3ヶ月治療したならもう十分でしょう」と一方的に打ち切りを迫るケースがあります。 腰痛は治療期間が長期化しやすいため、医師の判断に基づいて継続すべきケースも多くあります。弁護士は治療継続の正当性を保険会社に主張し、早期打ち切りを防ぐ役割を果たします。
- 後遺障害が疑われる
- 腰痛が6ヶ月以上治療しても改善しない場合、後遺障害認定の対象となる可能性があります。 後遺障害申請には、的確な医証と一貫した症状の記録が必要であり、弁護士は等級認定に向けた資料収集や医師との連携をサポートし、症状固定後、適切な後遺障害申請の準備を行います。
- 腰痛が6ヶ月以上治療しても改善しない場合、後遺障害認定の対象となる可能性があります。 後遺障害申請には、的確な医証と一貫した症状の記録が必要であり、弁護士は等級認定に向けた資料収集や医師との連携をサポートし、症状固定後、適切な後遺障害申請の準備を行います。
- 提示された慰謝料額が明らかに低い
- 自賠責基準や任意保険基準で算出された慰謝料は、弁護士基準に比べて大幅に低い金額であることが一般的です。 弁護士に依頼することで、慰謝料が数十万円単位で増額される可能性があります。
実践的アドバイス|交通事故後の腰痛治療及び慰謝料請求において後悔しないために
腰痛は外見では重症度が分かりづらいため、記録・通院・証拠化が極めて重要です。以下は初動対応時に意識すべき実践的なポイントです。
- 初期診断は必ず整形外科へ
- 整骨院や接骨院での施術だけでは医学的証明力が弱く、慰謝料や後遺障害の認定に不利になることがあります。 まずは整形外科を受診し、画像検査(MRI・レントゲン)を受けることが必須です。
- 事故当日~翌日には医療機関を受診する
- 受診が遅れると、「事故との因果関係が不明」と主張されることがあります。 事故後できるだけ早く受診し、腰痛があることをしっかり申告することが重要です。
- 症状を詳細に記録する
- 痛みの強さ(10段階評価)、発症の時間帯(起床時・日中・夜間)など、具体的な症状の経過を毎日記録しましょう。 仕事・家事・日常生活でできなくなった動作も記録しておくと、慰謝料請求や後遺障害申請に活用できます。
- 通院の間隔を空けない
- 2週間以上通院が空くと、保険会社から「症状が改善している」とみなされることがあります。 医師の指示に従って定期的に通院し続けることが、治療の正当性を証明する上で重要です。
- 家族にも症状を説明しておく
- 家族の証言は、本人の主観的症状の客観化につながるため、保険会社との交渉や訴訟時に役立ちます。 できれば家族にも日常の様子や痛みの状況を記録してもらうことをおすすめします。
結論:腰痛は「我慢するもの」ではなく、「正しく向き合うべき症状」です
交通事故による腰痛は、見た目では分かりにくく、保険会社との交渉でも軽く扱われがちです。しかし、痛みが続くと、仕事や日常生活に大きな支障をきたすこともあります。
だからこそ、正確な診断を受け、症状を記録し、必要に応じて弁護士のサポートを受けることが大切です。
弁護士に相談することで、適正な慰謝料の確保や治療継続の支援、後遺障害認定のサポートが得られます。一人で悩まず、専門家の力を借りて、安心して回復に専念しましょう。
あなたの健康と権利を守るために、適切な対処とサポートを早めに受けることが何よりの近道です。
弊所では、腰痛が続いているが、どのように対応したらよいかわからない…という方からのご相談も受け付けております。「チャット弁護士」というLINE公式アカウントで、いつでも、何回でもご相談いただくことが可能です。現在悩まれているのであれば、ぜひご相談ください。あなたに合った解決策をご提案させていただきます。