医師が後遺障害診断書を書いてくれない?その理由と具体的な対処法を弁護士が解説

医師が後遺障害診断書を書いてくれない?その理由と具体的な対処法を弁護士が解説
本記事の監修弁護士:菅原 啓人

本記事の監修弁護士:菅原 啓人

2021年1月弁護士登録(現在、東京弁護士会所属)。
都内の法律事務所にて、交通事故案件を中心に、労働事件、不貞、離婚事件等の一般民事事件を担当。
2024年10月ライトプレイス法律事務所に入所。
趣味は、野球観戦、映画鑑賞、旅行、スイーツ巡り等。

この記事のまとめ

交通事故では、ケガの治療を尽くしても痛みが残る場合があります。

後遺障害診断書とは、このような場合に、完治しなかった部位や具体的な症状について医師が記載する重要な書類です。

後遺障害診断書は、後遺障害等級の認定を受ける際に必要な書類ですが、医師によっては、後遺障害診断書を書いてくれない場合があります。

医師が後遺障害診断書を書いてくれないことにより、後遺障害申請ができずにお困りの方もいらっしゃるでしょう。

本記事では、後遺障害診断書を医師が書いてくれない場合に考えられる理由とその際の具体的な対処方法について解説します。

目次

1.整形外科で書いてもらう後遺障害診断書とは?

後遺障害診断書(正式名称を「自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書」といいます。)とは、交通事故によるケガを治療したものの完治せずに残ってしまった症状やその部位について、医師が記載した診断書です。

後遺障害診断書には、後遺症が残った部位、具体的な症状、種々の検査を行った結果等、詳細な情報が記載されます。

2.後遺障害診断書は何のために必要?

後遺障害認定の手続きでは、所定の書類を加害者が加入している自賠責保険に提出する必要があります。

その中のひとつが後遺障害診断書です。

したがって、後遺障害診断書を医師に書いてもらえなければ、後遺障害認定のための申請をすることができません。

3.医師が後遺障害診断書を書いてくれない場合に考えられる理由

(1)「症状固定」時期ではないと考えている

後遺障害診断書は、「症状固定」(これ以上、怪我の治療を続けても大幅な改善が見込めない状態になったこと)になった後で作成されるものです。

つまり、「症状固定」であるとの診断を受けていることが前提となるため、医師が治療を継続すれば症状が改善する見込みがあると考えている場合には、「症状固定」の時期ではないとして後遺障害診断書を書いてもらえないのです。

症状固定については、以下の記事でも解説しております。併せてお読みください。

(2)後遺障害がないと判断している

ケガが完治しており、後遺障害はないと医師が考えている場合には、後遺障害診断書を書いてくれないことがあります。

特にMRI等の画像検査において異常がみられない神経症状については、後遺障害ではないとして医師が後遺障害診断書の作成を断るケースがあります。

(3)治療の途中から診察しており、症状の経過を把握していない

何らかの理由(引越し、前の病院での対応が良くないと感じた等)で転院し、途中から医師が変わった場合、転院先の医師が治療の全経過を把握しておらず、後遺障害診断書をかけないと判断することがあります。

これは、後遺障害診断書には、事故当初からのケガの症状や治療後の残存症状に加え、治療中の回復状態や今後の見通しなどを記載しなければならないためです。

(4)争いごとなどの面倒なことに巻き込まれたくないと考えている

賠償について保険会社と患者が揉めている場合、裁判等になった際に、後遺障害診断書を書いた医師に裁判所への出廷や意見書の作成が求められることがあります。

そのため、示談交渉や裁判等で証言を求められる可能性もあると考え、後遺障害診断書の作成を断るケースがあります。

4.後遺障害診断書を書いてくれない場合の対処方法

(1)治療を継続する

医師が症状固定時期ではないことを理由に、後遺障害診断書を書いてくれない場合には、症状固定になる見込み時期を確認したうえで、医師から症状固定の診断を受けるまで、治療を継続することが重要です。

確認した症状固定見込み時期になったら再度作成を依頼してみましょう。

(2)後遺障害が残っていることを医師に認めてもらう

完治しており後遺障害がないと考えている場合、どのような症状があるのか具体的に医師に伝え、後遺障害が残っていることを認めてもらいましょう。

MRI等の画像検査で異常がみられない軽い神経症状であっても、後遺障害認定されることがあります。

したがって、医師から検査で異常がみられないことを理由に後遺障害認定されないと言われても、残存症状について丁寧に説明し、協力を依頼することが重要です。

(3)転院前の病院から医療記録を取り寄せる

転院により、医師が治療の経過を十分に把握していないという理由で後遺障害診断書を書いてくれない場合は、転院前の病院から医療記録を取り寄せて、それをもとに後遺障害診断書を作成してもらうようにお願いしてみましょう。

また、そもそも転院する際には、そのとき通院している病院から適切な紹介状を書いてもらうことも重要です。

(4)必ずしも示談交渉や裁判に協力することにはならないと伝える

医師が交通事故に関する紛争に巻き込まれたくないと考えている場合、後遺障害診断書を書いたからといって、必ずしも示談交渉や裁判に協力することにはならないと伝え、協力してもらうようお願いしてみましょう。

医師に極力迷惑をかけないということを伝えるだけで、後遺障害診断書を書いてもらえるかもしれません。

5.後遺障害認定について弁護士に依頼するメリット

上記のとおり、後遺障害診断書を医師に書いてもらえないというケースはしばしば見受けられます。

また、後遺障害診断書は、医師であっても記載の仕方を十分に把握していない場合が多く、被害者ご自身でそのまま医師に作成を依頼した場合、不十分な内容のものとなってしまい、結果として適切な等級認定を受けられない可能性があります。

後遺障害診断書の作成を医師に断られた場合、代わりに弁護士が医師と交渉することで書いてもらえることがあります。

後遺障害診断書作成の段階から弁護士に依頼することで、記載内容が適切であるか、認定を受けるための検査がきちんとなされているか等を弁護士が確認することができ、結果として適切な等級認定が受けられる可能性が高まります。

また、適切な等級認定が受けられたとしても、誰が交渉するかによってその後の賠償額は大きく異なります。

弁護士に依頼することで、過去の裁判例を基に算出した裁判基準(弁護士基準ともいいます。)での賠償額請求をすることができるため、保険会社から提示される賠償額よりも約2〜3倍の増額が見込めます。

6.まとめ

今回は、医師が後遺障害診断書を書いてくれない場合の理由及び対処法について解説しました。

後遺障害診断書を書いてくれない理由は上記以外にも様々ですが、その理由に応じて適切に対処することが重要です。

適切に対処し、後遺障害診断書を書いてもらわなければ、等級認定を受けることができず、適切な賠償金を得られなくなってしまいます。
とはいえ、被害者ご自身で適切な後遺障害診断書を医師に依頼するのは、大きな負担となるでしょう。

後遺障害診断書を書いてもらえず困っている場合や、そもそも何をすればよいかわからず最初から後遺障害申請手続きを弁護士に依頼したい場合は、迷わず弁護士に相談されることをおすすめします。

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