交通事故の3つの解決方法、それぞれの長所と短所は?

交通事故の3つの解決方法、それぞれの長所と短所は?

交通事故の解決方法は保険会社との交渉をイメージされる方が多いと思いますが、常に保険会社との交渉により解決するとは限りません。

交通事故にあってケガをしてしまいました。保険会社から 治療費や入院費、慰謝料などの提示を受けたのですが、私の被害について軽く見られているようで納得できません。でも、保険会社はこれ以上の支払いはできないと言われています。これで納得するしかないのでしょうか?

辛い思いをしたのに比べて保険会社の提示が十分でないと感じていらっしゃるのですね。交通事故の解決方法は保険会社との交渉だけではありません。保険会社から提示された金額に納得できない場合には、その他の方法で解決できないか考えてみましょう。

そこで、今回は交通事故の問題の解決方法について解説いたします。

この記事の監修弁護士:浅尾 耕平
2010年12月弁護士登録(第一東京弁護士会)。
2021年ライトプレイス法律事務所共同設立。交通事故、労働災害をはじめ多様な事件に従事。

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目次

交通事故の解決方法には3つの方法がある

交通事故の解決方法には3つの方法がある

交通事故の被害に遭った被害者は加害者に対して、交通事故によって生じた損害を賠償する権利を有する事になります。
これを不法行為(民法第 709条)に基づく損害賠償請求権といいます。

この損害賠償請求は、交通事故によって被害者に発生した損害の請求をすることができる権利です。そしてここでいう損害には、治療費や入院費、仕事を休むことになった場合の休業損害や後遺症などによる精神的苦痛に対する慰謝料など様々なものが対象となります

交通事故の場面では被害者は、加害者に対しこうした法律上の損害賠償請求権を行使できることを前提に、その賠償をどのようなプロセスを踏んで受けるかによって解決方法が分かれていきます
そんな交通事故の解決方法には、主に以下の3つが考えられます。

  • ① 示談交渉による解決
  • ② 交通事故紛争処理センターでの解決
  • ③ 訴訟による解決

そこで、以下ではそれぞれの方法の概要について解説いたします。

① 示談交渉による解決

示談というのは当事者が話し合いによって解決する方法のことをいいます。一般的な保険会社を通じた交通事故の解決方法は、この示談交渉による解決にあたり、最も広く交通事故の解決方法として利用されています

示談交渉は法律的には和解契約の締結(民法第695条)によりなされる解決となります。契約と聞くと解除されたりするのではないかと心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、一度成立した和解契約には確定効(民法第696条)と呼ばれる強い拘束力が認められるため、簡単には覆す事はできません。

示談交渉については、加害者が任意保険に加入している場合には保険会社が交渉相手になりますが、加入していない場合には本人と交渉することになります。
まず、この示談交渉による解決を図り、こうした交渉がうまく進まない場合に他の解決方法を取るのが一般的です

② 交通事故紛争処理センターでの解決

示談交渉が上手くいかない場合に、交通事故の解決を専門的に行っている公益財団法人交 通事故紛争処理センターを利用した解決を図る方法です。裁判外の紛争解決方法として”ADR”と呼ばれています

交通事故紛争処理センターには交通事故を専門に取り扱う弁護士が複数在籍しており、こうした弁護士が専門的な知見に基づいて第三者の立場から中立・公正に交通事故について 解決策などを提案する和解あっせんを行っています。

交通事故処理センターは全国11カ所にあり被害者の住所地や事故現場等の近くのセンターを利用することになります

③ 訴訟による解決

最終手段として強制的に交通事故の問題を解決する方法が訴訟解決です。
訴訟による解決は、 加害者が訴訟による解決に同意していなくても手続きを進め、判決にまで至ることが可能であるという点がその他の手段と比較した場合の最大の特徴といえます

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それぞれの解決方法のメリット・デメリット

それぞれの解決方法のメリット・デメリット

それぞれの解決方法はそれぞれどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

① 示談交渉による解決のメリットとデメリット

・メリット

示談交渉による解決のメリットは、すみやかに解決を図ることができる点です
また、費用も安く抑えることが可能な点も示談交渉による方法のメリット といえます。

・デメリット

示談交渉による解決のデメリットは、 ご本人が交渉を行う場合には、損害賠償額が低くなりやすいという点です

損害賠償額の基準には、自賠責基準、保険会社(任意保険)の基準、弁護士(裁判)基準があり、ご本人が交渉を行うと、加害者の保険会社は、最低限の水準である自賠責基準、もしくは自賠責基準に近い任意保険基準で算定するため、本来法律的に受け取れる金額よりも低い結果になるのが通常です。

金額とも関連しますが、 保険会社は交通事故の専門家であるのに対し、被害者の方はほとんどの方が交通事故に初めて遭われた方です。そのため、 被害者の方にとって不利な内容で交渉が進み、不利益な結果となっていることがわからずそのまま終わってしまう、というおそれがあります
また、お怪我をされて辛い状況である上に、金額の交渉等を自分で行わなければならないこと自体、精神的に非常にご負担に感じられる方も少なくありません。

こうしたデメリットは、弁護士委任を行うことで解消可能です

② 交通事故紛争処理センターでの解決のメリットとデメリット

・メリット

交通事故紛争処理センターでの解決を行うメリットは、交通事故を専門的に取り扱っている弁護士の中立・公正な意見を期待することができるという点です。

示談交渉が保険会社に有利になりがちなのに対して、 交通事故紛争処理センターでは弁護士が関与するため、一方に対して特に有利という事になりにくいのがメリットといえるでしょう。また、弁護士が関与する関係上、 損害賠償額の基準も裁判で用いられる基準が使用されるため、示談交渉の場合に比較して金額が高くなりやすい傾向にあります。

さらに、交通事故紛争処理センターの利用は 無料で利用できるという点も大きなメリットです。このように費用を抑えつつ、示談交渉の場合よりも高い賠償額を期待できるのが、交通事故紛争処理センターでの解決のメリットといえます。

・デメリット

交通事故紛争処理センターで解決を行うデメリットは、紛争処理センターの嘱託弁護士は、被害者・加害者の中立の立場に立って斡旋を行うため、必ずしも被害者の味方になってくれるわけではありません。 

賠償交渉は法律問題ですから、被害者ご本人では伝えるべきことをきちんと伝えられず、納得のいかない解決となるおそれがあります。また、紛争処理センターの利用の際には書類作成や原則期日への出席が必要になるなど、手間がかかってしまいます。 紛争処理センターを利用しての解決を希望する場合でも、無理してご自身ですべての手続きを行うより、交通事故に強い弁護士に委任されることが良い解決に繋がるといえるでしょう。

さらに、「自転車同士の事故」や「自転車と歩行者の事故」などは紛争処理センターの対象外の事案となり、上記以外にも対象外の事案も多くあります。そのため、どのような場合でも 利用できるとは限らない点は大きなデメリットといえるでしょう。

③ 訴訟による解決のメリットとデメリット

・メリット

訴訟による解決の最大のメリットは、請求が認容された場合にはその他の方法と比べて最も高額な賠償額が期待できる点にあります

これは、裁判で用いられる基準(弁護士基準)は前述の通り保険会社の基準より高額になるということに加え、遅延損害金や交通事故の場合には弁護士費用も請求できることが挙げられます。

交通事故などの不法行為に基づく損害賠償請求権は損害が発生した時点、つまり交通事故が発生した時から遅延損害金が発生します。 そのため、解決までに期間を要した場合には、その分、多くの遅延損害金が請求できることになります。

また、交通事故の場合には弁護士費用についても請求の対象となり、相手方に請求することができます。そのため、請求が認められた場合には、これらの金額も含めた賠償となり、より多くの賠償金を得ることが期待できます。
さらに、訴訟は強制的な解決であり、損害賠償の支払いを認める判決は強制執行ができます。 そのため、相手方が任意に支払わない場合には、財産を差し押さえるなどして、強制的に回収することができる非常に強力な手段となります

・デメリット

訴訟のデメリットは時間と費用がかかる点です
また、訴訟で請求を認めてもらうには、厳密な主張立証が必要となるため、かなり専門的な知識・経験がないと、望ましい解決を得ることは期待できませんまた、裁判官の前で証人尋問等を行う負担はそれなりに重たいものです。

そのため、訴訟に臨むのであれば、現実的には弁護士に委任しなければならない、ということが、ご自身のみで解決しようとされる方にとってはデメリットになってしまうといえるでしょう。

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各解決方法の解決までの流れについて

各解決方法の解決までの流れについて

次に各解決方法の解決方法の流れについて簡単に解説いたします。

① 示談交渉による場合の解決までの流れ

示談交渉による解決の場合には以下の様な流れで解決まで至ります。

Flow
交通事故の発生
Flow
治療~症状固定
Flow
後遺障害等級認定
Flow
示談交渉
Flow
示談成立
Flow
保険金支払い

示談交渉による解決で重要なプロセスとなるのが、後遺障害等級認定です

治療を継続していると、やがてこれ以上は回復しないという状態になる場合があります。
この状態を症状固定と呼びます。
こうした後遺症は症状の重さなどに応じて慰謝料や逸失利益などの損害額が変化します。

後遺障害等級認定は加害者の保険会社が行う事前認定と呼ばれる方法と、被害者自身や委任を受けた弁護士が行う被害者請求という方法の二つがあります。
事前認定では、加害者が任意保険に加入している場合には、被害者の方は手続きの必要はありません。
ただし、加害者側の任意保険会社が主導する手続きであるため、等級認定の可能性を高めるためのアドバイスや積極的な資料作成などはしてもらえません。そのため、本来であれば認定されるべき症状があっても、適正な後遺障害等級の認定が受けられなかった、というおそれがあります。
他方、被害者認定であれば、納得いくまで検査などの準備を行い、必要な証拠をそろえた上で申請を行うことができます。
示談交渉も、ここでの後遺障害等級認定結果を踏まえて進んでいきます。

後遺障害等級認定を検討している場合には、申請を行う前、できれば治療中の時点で弁護士へ相談することをおすすめします

② 交通事故紛争処理センターによる場合の解決までの流れ

次に交通事故紛争処理センターで解決を行う場合には以下のような流れとなります。

STEP
交通事故紛争処理センターへの申し込み
STEP
初回相談と資料などの提出
STEP
交通事故紛争処理センターの担当弁護士による和解あっせん
STEP
あっせん案の当事者双方への提示
STEP
あっせん合意

あっせん合意に至った場合には当事者間で和解契約を結ぶことになります。
合意できない場合には、申立人が希望した場合、審査請求を行うことができます。
合意に至らない場合でもその他の手続きが用意されている点は交通事故紛争処理センターの手続きの特徴といえるでしょう。

③ 訴訟による手続きの流れ

最後に訴訟で解決を行う場合には以下のような流れで判決に至ります。

STEP
訴状の提出
STEP
口頭弁論(弁論準備)
STEP
証拠調べ、尋問
STEP
判決

判決により裁判が終了する場合もありますが、それ以外にも裁判所が和解をすすめる場合があり、当事者双方がこれに合意した場合には和解によって訴訟が終了する場合もあります

交通事故の訴訟の場合、和解で終わるケースが多く、判決まで至ることは多くありません。
また、判決に不服がある場合には上訴してさらに争うこともできます。

訴訟手続きについては、本人が行う本人訴訟も可能ですが、手続きの内容を理解するのが難しく、様々なルールも存在するため、訴訟を検討する前に弁護士へ相談することを強くお勧めします。

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まとめ

交通事故の解決方法には、保険会社と示談交渉をする以外にも、色々な方法があるんですね!賠償金の金額や後遺障害認定についても不満があるので、交通事故紛争処理センターの利用や訴訟も考えてみようと思います。でも、難しそうですね…

保険会社の提示する金額は必ずしも妥当な金額とは限りません。同じ示談交渉でも、弁護士を代理人として保険会社と交渉を行うことで大幅に金額が増額できる場合もあります。示談交渉で解決に至らない場合、示談以外の手続きへ移行することも可能です。最適な解決方法をご提案させていただきますので、一緒に頑張りましょう。

交通事故の解決方法でどのような方法をとるべきか悩んでいる方、保険会社の提示する保険金の金額に不満がある方は、まずは弁護士へご相談ください。
当事務所は、交通事故について豊富な経験や実績を有する弁護士へLINEでいつでも相談が可能です
是非お気軽にご相談ください。

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