相続の基本から遺産分割協議まで|弁護士が解説する完全ステップガイド

相続の基本から遺産分割協議まで|弁護士が解説する完全ステップガイド
本記事の監修弁護士:大平 修司

本記事の監修弁護士:大平 修司

2010年12月弁護士登録。都内の事務所に勤務し、金融規制対応その他の企業法務や多くの訴訟・紛争対応に従事。
2016年4月に株式会社TBSテレビ入社。テレビ、インターネット配信、映画、スポーツ、eスポーツなど幅広いエンタテインメントについて、契約法務や訴訟・紛争対応や、インターネットビジネス、パーソナルデータの取扱いに関する業務等を担当。

2021年ライトプレイス法律事務所共同設立。

この記事のまとめ

相続は、個人(「被相続人」といいます)の死亡によって開始される、故人の財産を法定相続人に引き継ぐ重要な手続きです。相続の発生から遺産分割の成立までの流れは複雑で多岐にわたるため、相続手続きを進める際には、弁護士、税理士、司法書士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることが重要です。

目次

1. 相続の開始

民法 第882条 相続は、死亡によって開始する。

相続は、被相続人の死亡により開始します。 被相続人が亡くなった直後は、相続財産の分配といった手続ではなく、死亡届や死体火葬許可申請書の提出といった各種手続や葬儀のほか、戸籍や住民票の除票、年金や健康保険の手続、公共料金の名義変更などの対役所的な手続が多くなります。相続の開始直後、遺族の方々は、親族を亡くした悲しみやショックの中でこれらの手続に追われることになります。遺族の負担を少しでも減らしこれらの作業を効率的に進めるためには、事前にチェックリストを用意することも有効です。

2. 相続人の確定

相続手続を進めるため、まずは相続人を正確に把握・確定しなければなりません。

相続人を確定するには、まず、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得します。相続人全員の戸籍謄本も必要となります。被相続人が再婚していた場合や認知した子がいる場合には、思いがけない相続人が現れることもあります。このようなケースでは、戸籍調査に時間を要することが多く、早めの対応が重要です。また、推定相続人に行方不明者がいる場合には、失踪宣告の手続や家庭裁判所に不在者財産管理人の選任の申立てが必要になることもあります。

これらの書類をもとに、民法に基づく相続順位を確認し、法定相続人を特定します。被相続人の配偶者は常に法定相続人になります。子、父母、兄弟姉妹の相続順位は、第一順位が被相続人の子、第二順位が被相続人の父母、第三順位が被相続人の兄弟姉妹となっています。 具体的な法定相続分は相続人の構成よって異なります。具体的には以下のとおりです。

相続人の構成法定相続分
配偶者のみ配偶者100%
配偶者と子配偶者=2分の1子ども=2分の1 ※
配偶者と父母配偶者3分の2父母=3分の1 ※
配偶者と兄弟姉妹配偶者4分の3兄弟姉妹=4分の1 ※

※子ども、父母、兄弟姉妹はそれぞれ全員でこの相続分。同一順位の相続人の数でこの相続分を等しい割合で相続する。

なお、遺言書がある場合はその確認も必要です。自筆証書遺言の場合は家庭裁判所での検認手続きが必要となります。公正証書遺言の場合は、検認は不要です(公証役場に保管されているの原本を確認します。)。詳しくは遺言に関する記事でご説明していますので、そちらもご参照ください。

3. 相続財産の調査・評価

相続財産を正確に把握し、評価することは、公平な遺産分割と適切な相続税申告のために不可欠です。

預貯金や有価証券については、金融機関や証券会社への照会を行います。また、貸金庫の有無も確認しましょう。 不動産については、登記簿謄本と固定資産税評価証明書を取得します。必要に応じて不動産鑑定評価も実施します。

債務の確認も重要です。住宅ローン等の借入金残高、未払い税金、その他の債務(個人間借入等)を確認します。 これらの調査結果をもとに、相続税評価額を算定します。

財産の種類によって評価方法が異なるため、専門家のアドバイスを受けることが望ましいでしょう。

最後に債務控除の計算を行い、正味の相続財産額を確定させます。 なお、負の財産(借金等)も相続対象となるため、借金の存在に気づかず相続してしまうと、後に多額の債務を抱えるリスクがあります。このような場合には、家庭裁判所での相続放棄や限定承認の手続きを検討すべきです。相続放棄は3か月以内(この期間を「熟慮期間」といいます。)に行う必要があるため、財産調査と判断は迅速に行いましょう。

4. 遺産分割協議

相続人全員で話し合い、遺産の分割方法を決定する遺産分割協議は、相続手続きの中で最も重要で、かつ難しい部分の一つです。

まず、相続人全員の連絡先を確認し、協議の日程と場所を調整します。必要に応じて弁護士や税理士などの専門家の助言を受けることも有効です。

遺産分割は単に法定相続分に従って行われるだけではありません。被相続人からの生前贈与がある場合は、特別受益として考慮する必要があります。また、被相続人の療養看護や事業への貢献など、相続人の寄与分も考慮に入れます。

相続人同士の意見が対立する場合には、感情的なもつれから協議が長期化することがあります。必要に応じて、専門家に依頼したり、家庭裁判所の調停を利用することで、公正かつ円滑な分割がより迅速に実現できる可能性があります。

5. 遺産分割協議書の作成

遺産分割協議の結果を「遺産分割協議書」として書面化します。書面化は遺産分割協議の結果を証拠かするために必要となります。法務局や金融機関に対し、自分がその財産を相続したことを証明し、名義変更や払戻を受けるためにも必要となります。

遺産分割協議書には、作成日、被相続人の氏名と死亡日、相続人全員の氏名・住所と続柄の他、遺産と取得者、後から遺産が見つかった場合の取扱いに関する条項などを記載します。相続人による押印は実印で行いましょう。遺産分割協議書の作成にあたっては、将来の紛争を防ぐため、明確かつ具体的な記載をすることが重要です。

専門家によるチェックを受けることで、法的な問題や税務上の問題を回避することができます。

6. 相続税の申告・納付

続税の課税対象となるかどうかを確認します。基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超える相続財産(相続開始前の贈与財産の価額を加味する必要がある場合もあります。)がある場合、相続税の申告が必要となります。

相続税の計算は複雑で、法定相続分に応じた各相続人の相続税額の計算、実際の遺産取得割合に応じた納付税額の再計算などを行います。これらの計算には専門的な知識が必要となります。

また、小規模宅地等の特例や配偶者控除など、相続税には適用できる控除制度が多く存在します。これらの制度を活用することで、課税対象額を大きく減らすことができるため、相続に詳しい弁護士や税理士への相談は非常に有用です。 相続税の納付方法としては、一括納付が原則ですが、納付が困難な場合は延納や物納ができる場合もあります。

7. 名義変更手続き

相続した財産の名義を相続人に変更する手続きを行います。

不動産の場合、登記申請書を作成し、必要書類(戸籍謄本、遺産分割協議書等)とともに法務局に登記申請を行います。

預貯金の名義変更は、各金融機関への届出と必要書類の提出が必要です。有価証券についても、証券会社や発行会社への届出と必要書類の提出を行います。

その他、自動車の名義変更(陸運局での手続き)、事業用資産の名義変更、特許権等の知的財産権の名義変更なども、それぞれの管轄機関で適切に手続きを行う必要があります。

8. まとめ

遺産分割は上記のように進められます。遺産分割の効力は相続開始時に遡って生じますが、第三者に対する対抗要件(登記等)が必要な場合もあります。

遺産分割後は、相続人間での清算金の支払い(必要な場合)や、相続に関する書類の保管を行います。また、すべての相続財産の名義変更が完了したか、相続税の納付が完了したかを最終確認します。

相続の手続きは、法律、税務、不動産、金融など多岐にわたる専門知識が必要となる複雑なプロセスです。また、相続人間の関係性や感情的な問題も絡むため、スムーズに進行しないケースも少なくありません。当初は円満に遺産分割が進むように思われても、遺産分割を進める間に、相続財産に含まれるかどうか、相続財産の価額の評価、遺留分の侵害、預金等の使い込み、特別受益や寄与分の有無等をめぐって訴訟になるような紛争が生じることも珍しくありません。 そのため、相続手続きを進める際には、弁護士、税理士、司法書士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることが重要です。専門家のサポートを受けることで、法的リスクを回避し、相続人間の紛争を防ぎ、円滑な相続手続きを実現することができます。

また、被相続人の生前から相続対策を行うことも、スムーズな相続手続きのために有効です。例えば、遺言書の作成、生前贈与、相続時精算課税制度の利用などの方法があります。

相続は避けられないものですが、事前の準備と適切な対応により、故人の意思を尊重しつつ、相続人全員が納得できる形で財産を引き継ぐことが可能となります。相続に関する知識を深め、必要に応じて専門家に相談しながら、慎重かつ丁寧に相続手続きを進めていくことが大切です。

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