婚外子の相続手続き|遺産分割協議に参加させる必要はある?法定相続分と実子との違いも解説

婚外子の相続手続き|遺産分割協議に参加させる必要はある?法定相続分と実子との違いも解説

本記事の監修弁護士:浅尾 耕平

2010年12月弁護士登録(第一東京弁護士会)。大阪、東京に拠点を持つ法律事務所に所属。
労働、商事関係を中心に訟務活動を担当しつつ、国際カルテル事案、企業結合審査等競争法対応、総合商社、メーカー等の一般企業法務等に従事。
2015年から、国内大手調剤・ドラッグストアチェーン企業、及びAIソフトウェア事業会社のインハウスローヤーとして、法務・コーポレートガバナンス実務を企業内から経験。

2021年ライトプレイス法律事務所共同設立。

この記事のまとめ

婚外子とは婚姻関係にない男女間に生まれた子どものことで、父親に認知されることで法的な父子関係が成立します。2013年の最高裁判決以降、婚外子の法定相続分は嫡出子(婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子)と同等の権利を持つことが確定しました。

相続における重要ポイントとして、婚外子が認知されていれば遺産分割協議に参加させる必要があります

また、トラブル防止のための対策として、婚外子の存在を家族に事前に伝えておくこと、公正証書遺言を作成して相続財産を明確にしておくことなどが重要です。

目次

1.婚外子とは? 父母との法的関係や相続権はどうなっている?

(1)婚外子(非嫡出子)の法的定義

婚外子とは、結婚していない男女の間に生まれた子のことです。民法では「非嫡出子」(嫡出でない子)と呼ばれています。

結婚している夫婦の子(嫡出子)と違って、婚外子は父親との法的な親子関係が自動的には成立しません。


(2)母との関係は自動成立、父との関係は認知が必要

婚外子が母親から生まれた場合、出産するだけで自動的に母子関係が成立します。

しかし、父親との法的な親子関係を作るには「認知」という手続きが必要です。この認知があるかないかで、婚外子が父親の遺産を相続できるかどうかの決定的な要素となります。


(3)認知の方法と法的効果

● 任意認知

父親が自分から役所へ届け出ることで認知が成立します。

まだ生まれていない子(胎児)も認知でき、その場合は出生と同時に親子関係が始まります。

● 強制認知(裁判認知)

父親が認知を拒む場合、子または母親が家庭裁判所に「認知請求の訴え」を起こすことができます。

裁判で認知が認められると、子どもは父親の相続人としての権利を過去に遡って得られます


2.婚外子の相続分はどのような割合になる?

(1)かつての差別的取扱いとその廃止

昔は、民法900条4号の規定により、「婚外子(婚姻関係にない男女の間に生まれた子)の相続分は、婚姻関係にある夫婦の子の半分」とされていました。

しかし、この規定は憲法14条が定める平等の原則に反するとして、最高裁判所によって違憲判決が下されました。

この判決を受けて、2013年12月に民法が改正され、現在では婚姻関係の有無にかかわらず、すべての子の相続分は同じになりました。


(2)改正後の現行法における取り扱い

現行民法900条4項にて、以下のように定めています

(法定相続分)
第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
(中略)
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

民法|e-Gov 法令検索 より

つまり、認知された婚外子は他の子(嫡出子・養子等)と同一の法定相続分を持つというのが現在の原則です。

【例】被相続人に嫡出子Aと、認知された婚外子Bがいる場合
→ AとBは1/2ずつ相続権を有することになります。


(3)認知の有無による相続人資格の違い

法的に認知されていない婚外子は、相続人にはなれません。

もし相続人になるには、被相続人(親)が亡くなった後に「認知請求訴訟」を提起する必要があります。

注意すべきなのは、後から婚外子が認知された場合、すでに行われた遺産分割協議が無効になる可能性があるということです。そのため、早い段階での法的対応が非常に重要になります。


3.婚外子に相続させるときに押さえておきたい相続税と計算方法

(1)相続税法上も「認知」がカギ

婚外子が認知されていれば、税務上も「法定相続人」として扱われます

相続税の基礎控除額は以下のように計算されます。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

したがって、認知された婚外子がいれば、その人数分だけ基礎控除が増え、他の相続人にとっても節税効果があることになります。


(2)認知されていない場合の課税上の取り扱い

認知されていない婚外子は法定相続人ではないため、特別受益(遺贈)として取り扱われ、控除や税率が不利になります。
具体的には、相続税法における「第1順位」の適用を受けず、税率や非課税枠が低くなる可能性があります。


(3)相続税の申告実務上の注意

婚外子への相続を含む申告では、戸籍だけでなく、認知の事実を証する書面(認知届・判決書)の提出が求められることがあります。
また、他の相続人との間でトラブルがあれば、更正・修正申告に発展する可能性もあるため、専門家の関与が望まれます。


4.婚外子のことで相続争いを避けるための対策方法

(1)婚外子がいることをあらかじめ家族に伝えておく

被相続人の死後、初めて婚外子の存在が発覚するケースでは、他の相続人に与える心理的衝撃が大きく、遺産分割が泥沼化する原因になります。

そのため、婚外子の存在をある程度オープンにし、家族の認識を事前に調整しておくことがリスクヘッジになります


(2)遺言書の作成とその具体的効果

公正証書遺言を作成すれば、婚外子に相続させたい財産を明確に指定することができます。

ただし、他の相続人の遺留分は侵害しないように配慮が必要です。

<注意>
認知されていない婚外子に遺産を与えたい場合は、遺贈として記載し、あわせて認知する旨の遺言認知を行う必要があります。


(3)遺産分割協議における手続上の注意点

認知された婚外子は法定相続人として、遺産分割協議に参加させる必要があります

もし婚外子を除外して協議を行った場合、その協議は無効となるため、初動での戸籍調査を徹底することが不可欠です。


5.まとめ

論点内容
婚外子の定義婚姻外の子(非嫡出子)。父子関係は認知により成立。
相続権の有無認知されていれば嫡出子と同等の相続分を持つ。
相続税の扱い認知されていれば控除対象・課税対象ともに平等。未認知なら不利。
遺産分割協議認知された婚外子は協議に参加させる必要あり。除外すると無効。
トラブル防止策遺言作成・認知・家族への説明・専門家関与が有効。

婚外子が関係する相続は、専門家の関与が不可欠です

婚外子に関わる相続は、法律・税務・心理的な問題が複雑に絡み合います。

被相続人の意思を尊重しながら、相続人間のトラブルを最小限に抑えるには、事前の法的対策と死亡後の正確な手続きが不可欠です

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