相続開始時に胎児がいた場合の対応|出生後の協議や税務処理の注意点

相続開始時に胎児がいた場合の対応|出生後の協議や税務処理の注意点

本記事の監修弁護士:浅尾 耕平

2010年12月弁護士登録(第一東京弁護士会)。大阪、東京に拠点を持つ法律事務所に所属。
労働、商事関係を中心に訟務活動を担当しつつ、国際カルテル事案、企業結合審査等競争法対応、総合商社、メーカー等の一般企業法務等に従事。
2015年から、国内大手調剤・ドラッグストアチェーン企業、及びAIソフトウェア事業会社のインハウスローヤーとして、法務・コーポレートガバナンス実務を企業内から経験。

2021年ライトプレイス法律事務所共同設立。

この記事のまとめ

相続が開始したときに胎児がいる場合、その胎児は法律上「出生したものとみなされる」ため、将来の相続人として扱われます。ただし、実際の相続権は生きて生まれることが条件となります。

胎児がいる場合の相続手続きでは、通常、胎児が出生するまで遺産分割協議を行えないという問題があります。出生前に協議を進めたい場合は、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる方法があります。

相続税申告は被相続人の死亡を知った日から10か月以内に行う必要がありますが、その時点で胎児が出生していない場合は、出生後に修正申告などの対応が必要になることがあります。

胎児が死産だった場合は相続権が認められないため、その胎児を除外して相続計算をやり直すことになります。複雑な法的・税務的問題が絡むため、専門家への相談が推奨されます。

目次

はじめに

父親が亡くなったとき、奥さんのお腹の中に子供がいた場合、相続や相続税はどうなるのでしょうか。

胎児も相続できるの?」「遺産分割はどうしたらいいの?」と悩む方は多いと思います。

法律上、胎児も相続人として認められています。

しかし、生まれていない段階では様々な不確定要素があるため、手続きや相続税の申告においても特別な配慮が必要となります。

本記事では、相続開始時に胎児がいる場合の遺産分割や税務申告における注意点を、わかりやすく解説します。


胎児に相続権はあるのか?|民法の定め

結論から言うと、胎児にも相続権があります

これは、民法第886条第2項に以下のように定められているからです。

胎児は、相続については、すでに生まれたものとみなす。

つまり、相続開始時に母親のお腹の中にいた胎児も、原則として法定相続人としてカウントされるのです。

ただし、この権利が確定するのは胎児が生まれてくること(生存出生)が前提です。

胎児が法定相続人となる典型例

  • 被相続人が死亡時に妻が妊娠中であった
  • 前妻との間に認知した胎児がいる

胎児がいる相続で起こる実務的な問題点

胎児の存在が相続に関係すると、通常の相続手続きと比較して、いくつかの注意点があります。

1. 出生まで遺産分割協議ができない

遺産分割協議は相続人全員の合意が必要です。

胎児が法定相続人である場合、生まれるまでは「本人」が存在していないため、協議を進めることができません。

そのため、通常は胎児が出生してから遺産分割協議を行うことになります。

どうしても早く分割したい場合は、胎児のために特別代理人を家庭裁判所に選任してもらう方法もあります。

2. 胎児が死産だった場合

胎児は「生まれたものとみなす」とされていますが、死産だった場合には相続人にはなりません。

つまり、胎児は出生するまでの間は「将来の不確定相続人」という立場であり、実際の出生によって初めて相続権が確定することになります。


相続税の申告期限はどうなる?

相続税の基本ルール

相続税の申告と納税の期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内とされています。

では、胎児がいる場合、この10か月の間に出生が間に合わなかったらどうなるのでしょうか?

胎児が相続人となる場合の申告方法

  • 胎児が出生した場合:その胎児を相続人として含めて申告します。
  • 胎児が死産だった場合:その胎児を除いて相続税を計算します。

申告期限内に出生が確定していれば問題ありませんが、出生が申告期限を過ぎると、修正申告や更正の請求が必要になることがあります。

状況に応じて、税務署や弁護士・税理士に相談するのが得策です。


胎児がいる場合の遺産分割の注意点

遺産分割協議の先送り

胎児が生まれるまで相続人が確定しないため、多くのケースでは遺産分割協議をいったん保留します。

その間、預金凍結などが生じるため、生活費や葬儀費用の確保には注意が必要です。

特別代理人を立てる場合

出生を待たずに協議を進めたい場合、家庭裁判所に申し立てをして、胎児のために特別代理人を選任してもらうことが可能です。

ただし、この方法は胎児の利益を確保する必要があり、慎重な手続きが求められます。


よくある質問(FAQ)

胎児が双子だった場合はどうなりますか?

両方とも生存出生した場合はそれぞれが1人ずつの法定相続人となります。遺産は人数に応じて分割されます。

相続人が胎児しかいない場合、誰が代理するのですか?

出生まで待つのが原則ですが、やむを得ない場合は家庭裁判所に特別代理人の選任を申立てることが可能です。

被相続人の子ではなく、孫が胎児の場合は?

被相続人の子がすでに亡くなっていて、胎児が代襲相続人としての孫である場合には、その胎児にも相続権が認められます。


弁護士に相談するメリット

胎児が関係する相続は、通常の相続よりも法的・税務的に複雑です。
以下のようなケースでは、弁護士への相談が役立ちます。

【弁護士に相談するメリット】

  • 胎児が出生する前に遺産分割を進めたい場合の特別代理人手続き
  • 胎児を含めた正確な相続人調査と相続分の計算
  • 弁護士による相続税申告・検討
  • 他の相続人との円滑な交渉と将来の紛争予防

まとめ

  • 胎児にも法的に相続権がある
  • 出生が前提であり、死産の場合は相続権が認められない
  • 遺産分割協議は原則として出生後に行う
  • 相続税申告期限は10か月以内であり、タイミングに注意が必要
  • 特別代理人を選任することで出生前でも対応可能

胎児がいる相続は、法律と税務が交差する非常にデリケートな領域です。

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