
本記事の監修弁護士:大平 修司
2010年12月弁護士登録。都内の事務所に勤務し、金融規制対応その他の企業法務や多くの訴訟・紛争対応に従事。
2016年4月に株式会社TBSテレビ入社。テレビ、インターネット配信、映画、スポーツ、eスポーツなど幅広いエンタテインメントについて、契約法務や訴訟・紛争対応や、インターネットビジネス、パーソナルデータの取扱いに関する業務等を担当。
2021年ライトプレイス法律事務所共同設立。
2024年4月1日より、相続登記の手続きが全ての相続人に義務付けられました。それまで任意とされていた相続登記が、一定期間内に行わなければ最大10万円の過料(罰則)が科される制度に大きく変更されました。
「まだ手続きしていないけど大丈夫かな…」「親名義のまま放置していた土地がある」
――そんな方は要注意。
本記事では、相続登記義務化の内容・背景・手続き・罰則・よくある疑問まで、わかりやすく解説しています。
相続後に後悔しないためにも、今のうちに必要な対応を確認しましょう。
1. 相続登記とは?これまで義務じゃなかったの?
相続登記とは、被相続人(亡くなった方)から相続人へ不動産の名義を変更する登記手続きです。
たとえば親名義の土地や建物を相続したとき、法務局に届け出て自分の名義に変更する必要があります。
▽ これまでは義務ではなかった
以前は相続登記が義務化されていませんでした。そのため…
- 登記費用を惜しんで放置
- 兄弟間の話し合いがつかないまま放置
- 遠方の不動産なので手間がかかる
といった理由で、相続登記されないままの“宙に浮いた土地”が大量に発生していたのです。
2. なぜ相続登記が義務化されたの?
この背景には、「所有者不明土地問題」があります。
▽ 所有者不明土地とは?
登記簿上の名義人が死亡していたり所在不明であったりする土地のことです。
国土交通省の調査によれば、2016年時点で、全国の所有者不明土地は九州の面積を上回る規模に達しており、これにより公共事業や民間開発に重大な支障が生じています。
- 所有者を明確にすることで土地利用の円滑化を図る
- 空き家・耕作放棄地などによる治安悪化等の社会問題を解消する
- 不動産の透明性を確保する
3. 義務化の内容と罰則(過料)の概要
2024年4月1日施行の改正不動産登記法により、相続登記に関する以下の義務が設けられました。
内容 | 詳細 |
---|---|
対象 | 相続により不動産を取得した相続人 |
登記の期限 | 相続の開始と、自身が取得したことを知った日から3年以内 |
正当な理由がない遅延 | 最大10万円の過料 |
正当な理由とは? | 相続人多数・病気・戸籍不明など、合理的事情がある場合 |
4. 相続登記に関する3つのポイント
① 登記義務は「相続開始と不動産の取得を知った日から3年以内」
たとえば、兄弟が亡くなったことにより不動産を相続した場合、その死亡を知った日から3年以内に登記手続きを行う必要があります。
また、「父の死亡は知っていたが、不動産の存在を後から知った」という場合は、その不動産の存在を知った日から起算されます。
② 相続人申告登記で「とりあえず義務を果たす」ことができる
遺産分割がまとまっていない、名義変更まで時間がかかりそう…
そんな場合には、「相続人申告登記」によって登記義務を一時的に果たすことが可能です。
これは、不動産の名義を変えるものではありませんが、相続が発生したことを法務局に通知する簡易的な登記制度です。 登録免許税(登記をするときにかかる税金)もかからず、最低限の義務を果たすことで過料を回避する手段として有効です。
ただし、相続人申告登記をした場合、その申請義務を果たしたとみなされるのはその申出をした相続人のみです。他の相続人がペナルティを回避するには、各自で申告登記が必要なので、注意が必要です。
また、相続人申告登記は直ちに相続登記の申請をするのが難しい場合の代替手段であるため、不動産を売却したり抵当権を設定したりしたいときは、別途相続登記の申請をすることが必要です。
③法定相続情報一覧図の活用が推奨される
「法定相続情報一覧図」は、登記に必要な戸籍書類一式をまとめた制度で、複数の登記・相続手続きで活用できる便利な仕組みです。
この一覧図を弁護士や司法書士と連携して取得・管理しておくことで、その後の手続きが大幅にスムーズになります。
「法定相続情報一覧図」は法務局で記入様式例が配布されています。以下のページからご確認いただけます。
主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例(法務局のページに移動します)
5. 相続登記をしないとどうなる?よくある“放置リスク”
相続登記を行わない場合のリスクとは、どのようなものがあるのでしょうか。
特に挙げられるリスクとしては、以下のようなものがあります。。
リスク | 内容 |
---|---|
所有者不明扱いで売却できない | 名義が故人のままだと不動産を売却・活用できない |
相続人が死亡し権利関係が複雑化 | 相続人のさらに相続人(代襲相続)が発生し手続が煩雑に |
固定資産税や管理責任の所在が不明に | 実際の管理者が費用を負担する羽目になることも |
将来の訴訟リスク | 相続分を主張する人が出てきて争いに発展する可能性 |
7. よくある質問(FAQ)
- 自宅の登記名義が親のままです。すぐに変更しないとダメですか?
-
2024年4月1日以降は、相続開始から3年以内に登記が必要になります。親の死後すでに3年以上が経過している場合でも、速やかに手続きを行えば過料を回避できる可能性があります。
- 放置していて罰則を受けるのはいつから?
-
期限を超えて放置していることが法務局に認知された場合、調査と勧告の手続きを経たうえで過料が課される可能性があります。
まとめ|相続登記の義務化で「放置」はもうできない時代に
相続登記の義務化により、不動産を相続した人にとって「登記は当然にやるべきこと」となりました。
これまで見過ごされがちだった名義変更が、法律上の義務として定められ、放置することのリスクは著しく高まっています。
相続が新たに発生した場合はもちろん、すでに相続があったものの未登記の不動産がある場合も、早めの対処が肝心です。
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弊所で対応可能な相続登記に関する業務の例
- 相続人の調査
- 遺産分割協議書の作成
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