
本記事の監修弁護士:東山 詩奈
2012年12月弁護士登録。愛知県内の法律事務所に勤務し、企業法務のほか、交通事故、不動産、離婚・相続のなどの多くの一般民事事件の訴訟・紛争対応に従事。2015年三菱UFJ信託銀行株式会社に入社。国内外の法規制対応、コンプライアンス対応、海外子会社の経営管理などを担当。2024年ライトプレイス法律事務所に入所。
有責配偶者とは、不倫や暴力などにより婚姻関係を破綻させる原因を作った配偶者のことです。
有責配偶者からの離婚請求は原則として認められませんが、別居が相当の長期間(7〜10年以上が目安)に及び、未成熟子がおらず、相手が離婚により過酷な状況に置かれない場合には、例外的に認められることがあります。
有責配偶者は他方配偶者から夫婦関係を破綻させる原因を作り出したことを理由に慰謝料請求を受ける可能性があり、相場は離婚原因によって30〜300万円程度です。
また、有責配偶者からの婚姻費用分担請求は制限されることがありますが、子どもの養育費については請求できます。
財産分与や年金分割、親権については、有責性による直接的な影響を受けません。
配偶者の不倫や暴力で悩んでいる方、または自分が有責配偶者でありながら離婚を求めたい方は、法的な権利と制約を正しく理解することが重要です。
1. 有責配偶者とは何か
有責配偶者の定義
有責配偶者とは、夫婦関係が破綻する原因を単独で、または主に作った配偶者のことをいいます。簡単に言えば、「離婚の原因を作った側」という意味です。
例えば、夫が不倫をして夫婦関係が壊れた場合、夫が有責配偶者となります。妻が暴力を振るって夫婦関係が破綻した場合は、妻が有責配偶者です。
法定離婚事由との関係
民法第770条では、裁判で離婚が認められる原因(法定離婚事由)を定めています。この法定離婚事由にあたる行為をした人が、有責配偶者になります。
法定離婚事由は以下の5つです。
(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
これらの事由を作り出した側が有責配偶者となります。
なぜ有責配偶者かどうかが重要なのか
有責配偶者かどうかは、離婚をめぐる様々な場面で重要な意味を持ちます。
まず、有責配偶者からの離婚請求は原則として認められません。自分で夫婦関係を壊しておきながら、相手に離婚を求めることは、法律上も道義的にも許されないと考えられているためです。
また、有責配偶者は他方配偶者から慰謝料を請求される立場になります。さらに、別居中の生活費である婚姻費用についても、有責配偶者からの請求は制限を受けることがあります。
このように、有責配偶者かどうかによって、離婚や金銭面での権利・義務が大きく変わってくるのです。
2. 有責配偶者となる5つのケース
不貞行為(不倫・浮気)
不貞行為とは、既婚者が自由意思に基づいて、配偶者以外の異性と肉体関係(性的関係)を持つことをいいます。
単にメールやLINEでやり取りをしている、食事に行っただけでは不貞行為にはなりません。肉体関係があって初めて不貞行為と認められます。
裁判で不貞行為を原因とする離婚が認められるには、不貞行為の事実を立証する必要があります。
不貞行為の証拠としては、以下のようなものが有効です。
- ラブホテルに出入りする写真や動画
- 性的関係があったことを示すメールやLINEのやり取り
- 探偵による浮気調査報告書
- 本人の自白や念書
なお、不貞行為の証拠に関しては以下の記事でも詳しく解説しています。

悪意の遺棄
民法第752条には、夫婦間の義務である「同居の義務」「協力義務」「扶助の義務」が定められています。これらの義務を果たさない場合には悪意の遺棄となり、有責配偶者となる可能性があります。
(同居、協力及び扶助の義務)
第七百五十二条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
具体的には以下のような行為が該当します。
- 正当な理由もなく家を出て別居する
- 収入がありながら生活費を渡さない
ただし、単身赴任や互いの話し合いによる別居、DVからの避難などの場合は、悪意の遺棄とはみなされません。正当な理由がある別居であれば問題ないということです。
実務上、悪意の遺棄が認められることは多くありませんが、悪意の遺棄とは認められなくても、他の離婚事由(婚姻を継続し難い重大な事由)が認められる場合があります。
3年以上の生死不明
配偶者と音信不通で生きているのか死んでいるのかわからない状態が3年以上継続する場合、残された配偶者は離婚請求することができます。
この場合、行方不明になっている配偶者は、便宜上有責配偶者扱いになります。
離婚を求める場合には、配偶者をさまざまな方法で捜索したが生死不明であったということを裁判所に証明する必要があります。具体的には以下のような書面を裁判所に提出します。
- 警察へ提出した行方不明者届や行方不明者届受理証明書
- 失踪した配偶者の親族に問い合わせた結果が不明であることの陳述書
回復の見込みがない強度の精神病
配偶者の精神的疾患が非常に強く、かつ回復の見込みがない場合、法定離婚事由として認められる可能性があります。
具体的には以下のような病気が該当します。
- 統合失調症
- 認知症
- 双極性障害(躁うつ病)
この場合も便宜上有責配偶者扱いになりますが、裁判で離婚が認められるのはまれです。
なぜなら、治療が必要である配偶者の離婚後の療養について具体的な見込みがないまま離婚を認めることは、離婚された配偶者にとって極めて酷だからです。基本的には、治療を必要とする配偶者の離婚後の療養・生活について具体的方策の見込みをつけたうえでないと、離婚の請求は認められません。
その他婚姻を継続し難い重大な事由(DV、モラハラなど)
上記の4つに該当しなくても、婚姻を継続し難い重大な事由がある場合には、有責配偶者として認められます。
具体的には以下のようなケースです。
DV(家庭内暴力)
- 身体的暴力(殴る、蹴る、物を投げつけるなど)
- 精神的暴力(暴言、脅迫、無視など)
モラルハラスメント(モラハラ)
- 人格を否定するような言動
- 経済的に支配する
- 過度な束縛や監視
その他
- 犯罪行為による服役
- ギャンブルや浪費癖
- 性的不調和(性交渉の拒否など)
- 配偶者の親族との不和
これらの行為が継続し、夫婦関係の修復が困難な状態になっている場合、有責配偶者と認められる可能性があります。
双方に有責性がある場合の扱い
夫婦の双方に有責行為がある場合、その扱いは責任の程度によって異なります。
一方の責任の割合が大きい場合
責任の割合が大きい方が有責配偶者となります。そして、離婚裁判になった場合、その者からの離婚請求は基本的に認められません。
例えば、夫が先に不倫をして夫婦関係が悪化し、その後妻も不倫をしたというケースでは、先に不倫をした夫の有責性がより重いと判断されることが多いです。
責任の割合が同程度の場合
例えば、夫婦それぞれが同じ時期に不倫をしていた場合などです。この場合、有責性が相殺され、どちらにも離婚の責任がない場合の離婚請求と同じ扱いがなされます。
そのため、離婚が認められるのは難しくなりますが、夫婦関係が破綻していると判断されれば、離婚が認められる可能性があります。
3. 有責配偶者からの離婚請求は認められない
原則論:有責配偶者からの離婚請求が認められない理由
有責配偶者からの離婚請求は、原則として認められません。
自分で夫婦関係を壊しておきながら、その破綻を理由に離婚を求めることは、矛盾した行動であり、信義誠実の原則に反する行為だと考えられています。
例えば、夫が自ら不倫をして夫婦関係を破綻させておきながら、「もう夫婦関係は破綻している」として離婚を求めることは、あまりにも身勝手だということです。
相手を傷つけた上に、相手が望まない離婚を強要することは、容認されるものではありません。
他方配偶者は、何も悪いことをしていないのに、一方的に婚姻関係を解消されてしまうことになります。これは他方配偶者としての地位を不当に奪うことになります。
協議・調停では合意があれば離婚可能
もちろん、有責配偶者からの離婚請求であっても、他方配偶者が離婚に同意すれば離婚することは可能です。
協議離婚
夫婦で話し合って離婚に合意し、離婚届を提出すれば離婚できます。有責配偶者であっても、他方配偶者が納得して離婚に同意すれば、協議離婚は成立します。
調停離婚
家庭裁判所で調停委員を交えて話し合い、双方が合意すれば調停離婚が成立します。この場合も、有責配偶者からの申立てであっても、他方配偶者が同意すれば離婚できます。
つまり、有責配偶者からの離婚請求が制限されるのは、あくまで裁判離婚の場合です。他方配偶者が離婚に同意してくれるなら、協議や調停で離婚することは可能なのです。
裁判では原則として認められない
他方配偶者が離婚を拒否している場合は、上記のとおり有責配偶者が離婚訴訟を起こしても、原則として離婚請求は認められません。
裁判所は「有責配偶者からの離婚請求は信義誠実の原則に反する」として、請求を棄却します。
つまり、有責配偶者は、他方配偶者が拒否している限り、裁判では離婚できないということです。
ただし、この原則にも例外があります。
次の章で詳しく見ていきましょう。
4. 有責配偶者からの離婚が認められた事例
最高裁昭和62年9月2日大法廷判決について
事案の概要
この事案は、以下のようなものです。
- 当該夫婦は1937年2月に結婚
- 1949年8月頃、夫が不倫相手と同棲を始め、以来別居状態が続く
- 夫は不倫相手との間に2人の子どもをもうけ、認知した
- 妻は別居後、夫から生活費の支援をほとんど受けず、自分で働いて生活していた
- 1951年頃、夫が一度離婚訴訟を起こしたが、有責配偶者からの請求として棄却された
- 1984年に夫が再び離婚訴訟を提起(この時点で別居期間は約36年経過していた)
最高裁判所の判断
最高裁判所は、本判決にて有責配偶者からの離婚請求であっても、以下の要件をすべて満たす場合には、離婚請求を認めることができるという基準を示しました。
- 夫婦の別居が、両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及んでいること
- 本事案では、別居期間が約36年に及んでおり、同居期間との対比においても相当の長期間であると判断されました。
- その間に未成熟の子が存在しないこと
- 本事案では、養子2人がいましたが、すでに成人していました。
- 相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等、離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が認められないこと
- この要件については、さらに審理が必要として、事件を高等裁判所に差し戻しています。
本判決の重要性
判例変更の意義
それまでの最高裁判所の判例では、有責配偶者からの離婚請求は原則として一切認められませんでした。
しかし、この判決により、一定の要件を満たせば、有責配偶者からの離婚請求も例外的に認められる道が開かれたのです。
離婚・慰謝料請求実務への影響
この判決以降、有責配偶者からの離婚請求であっても、一定の要件を満たせば認められるようになりました。
ただし、実際に離婚が認められるハードルは依然として高く、別居期間が7〜10年以上必要とされるケースが多いです。
また、未成熟子の有無や相手方の経済的状況なども厳格に審査されます。
5. 例外的に有責配偶者からの離婚が認められる3要件
前章で見た最高裁判決により、有責配偶者からの離婚請求であっても、以下の3つの要件をすべて満たす場合には、例外的に認められると考えられます。
別居が相当の長期間に及んでいること(7〜10年以上が目安)
別居期間の長さ
一般的には、別居期間が7〜10年以上続いていると、「相当の長期間」と判断される可能性が高くなります。
ただし、単に年数だけで判断されるわけではありません。夫婦の年齢、同居期間、別居に至った経緯なども総合的に考慮されます。
判断のポイント
- 同居期間が短く、別居期間が長い場合は、離婚が認められやすい
- 同居期間が長く、別居期間が比較的短い場合は、離婚が認められにくい
- 高齢の夫婦の場合、やや短い別居期間でも認められる可能性がある
実際の裁判例
過去の判例を見ると、以下のようなケースで離婚が認められています。
- 別居期間8年弱で離婚請求を認めた事例(ただし、別居期間だけでなく他の事情も考慮)
- 別居期間約10年で離婚を認めた事例
逆に、別居期間が7年程度でも、他の要件を満たさないために離婚が認められなかった事例もあります。
カウントされない期間
以下の期間は、別居期間としてカウントされないので注意が必要です。
- 単身赴任の期間
- 家庭内別居の期間(同じ家に住んでいるが会話がない状態)
- 連絡を取り合っている状態
あくまで、完全に別々の生活を営んでいる期間だけがカウントされます。
未成熟子がいないこと
未成熟子とは
未成熟子とは、社会的・経済的に自立していない子どものことをいいます。重要なのは、単に年齢だけで判断されるのではないということです。
判断基準
- 18歳未満でも結婚や仕事をしている子どもは、未成熟子ではない
- 18歳を超えても学生だったり、障害を抱えていたりする場合や、親のサポートが必要な場合は、未成熟子と判断されることがある
なぜ未成熟子がいると離婚が認められないのか
子どもの福祉を守るためです。有責配偶者からの離婚を認めると、子どもの生活環境が大きく変わり、経済的にも精神的にも不安定になる可能性があります。親の都合で子どもを不幸にすることは避けなければならないという考え方です。
例外的に認められるケース
ただし、未成熟子がいても、以下のような場合には離婚が認められることがあります。
- 有責配偶者から子どもに対して十分な養育費等の支払いが続けられている
- 子ども自身が親の離婚を望んでいる、または反対していない
- 子どもの監護について適切な体制が整っている
相手が離婚により過酷な状況に置かれないこと
「過酷な状況」とは
離婚によって相手方配偶者が精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる場合、離婚請求は認められません。
経済的側面
裁判所は、特に経済的な側面を重視します。
- 離婚後の相手の収入や資産
- 住居の確保
- 年齢や健康状態を考慮した就労可能性
例えば、高齢で働けない妻が、離婚によって住む場所を失い、生活に困窮するような場合は、「過酷な状況」と判断されます。
過酷な状況を回避する方法
有責配偶者側から、以下のような提案をすることで、「過酷な状況」を回避できる可能性があります。
- 十分な額の財産分与の提示
- 慰謝料の支払い
- 住居の提供または家賃の負担
- 継続的な経済的支援の約束
精神的・社会的側面
経済面だけでなく、精神的・社会的な影響も考慮されます。ただし、別居期間が長期化すると、相手方の精神的苦痛も徐々に薄れていくと考えられるため、この要素の重要性は相対的に低下します。
各要件の具体的な判断基準
これら3つの要件は、すべて満たす必要があります。1つでも欠けると、有責配偶者からの離婚請求は認められません。
また、これらは形式的な要件ではなく、個別の事情を総合的に考慮して判断されます。そのため、同じような別居期間でも、事案によって結論が異なることがあります。
- 有責配偶者の責任の程度(不倫の期間、態様など)
- 相手方の離婚意思(本当は離婚したいのか、意地で拒否しているのか)
- 別居後の生活関係(有責配偶者が別の人と内縁関係にあるかなど)
- 離婚を認めないことが社会正義に反するかどうか
6. 有責配偶者が離婚条件に与える影響
有責配偶者であることは、離婚そのものの成否だけでなく、離婚に伴う様々な条件にも影響を与えます。
慰謝料:有責配偶者は慰謝料を請求される(相場30〜300万円)
慰謝料請求の根拠
有責配偶者の不法行為(不貞行為、暴力など)によって精神的苦痛を受けた場合、他方配偶者は慰謝料を請求することができます。
慰謝料の相場
慰謝料の金額相場は、不法行為の内容によって異なりますが、概ね30~300万円の範囲内です。有責性が比較的明らかである不貞行為を理由とする離婚の場合、慰謝料の相場は150〜300万円程度となります。
※注意点:有責配偶者であっても、他方配偶者も有責行為をしている場合(双方不貞など)は、慰謝料が減額されたり、相殺されたりすることがあります。
実際の裁判例
- 不貞期間が長期(6年半)で、不倫相手との間に子どもがいた事案:慰謝料300万円
- 不貞期間が比較的短期(1年程度)の事案:慰謝料150万円
- DVによる離婚の事案:慰謝料100〜300万円
慰謝料の増額・減額要因については、以下の記事もご参考ください。

婚姻費用:有責配偶者からの請求は制限される(ただし子どもの養育費は別)
婚姻費用とは
婚姻費用とは、夫婦が婚姻生活を維持するために必要な費用のことです。具体的には、生活費、住居費、医療費、子どもの教育費などが含まれます。
夫婦には法律上、収入に応じて婚姻費用を分担する義務があります(民法第752条)。そのため、別居中であっても、収入の多い方は少ない方に対して婚姻費用を支払う義務があります。
有責配偶者からの婚姻費用請求の制限
有責配偶者から婚姻費用を請求することは、信義則に反し、権利濫用にあたるとして、請求が制限されたり、減額されたりします。
例えば、妻が不倫をして家を出た場合、妻から夫に対する婚姻費用請求は、原則として認められません。
自分で夫婦関係を壊しておきながら、生活費を要求するのは身勝手だと考えられるためです。
子どもの養育費部分は請求できる
ただし、有責配偶者が子どもを連れて別居している場合、子どもの養育費にあたる部分については請求することができます。
なぜなら、養育費は子どもの権利であり、親の有責性とは関係がないからです。
例えば、妻が不倫をして子どもを連れて別居した場合でも、子どもの生活費・教育費については、夫に請求できます。
実際の裁判例
名古屋高裁金沢支部昭和59年2月13日決定では、不貞行為をした妻からの婚姻費用請求について、以下のように判断しました。
- 別居直後の期間:妻自身の生活費についても一部認めた(生活を立て直すのに必要な期間)
- 妻が実家で働き始めた後:妻自身の生活費は認めず、子ども2人の養育費のみ認めた
このように、有責配偶者からの婚姻費用請求は、個別の事情に応じて柔軟に判断されます。
財産分与:原則として影響しない
財産分与とは
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を、離婚時に分け合うことをいいます。
有責性の影響
財産分与は、夫婦が協力して築いた財産を公平に分配するという制度です。そのため、原則として、どちらが有責配偶者かは財産分与の割合に影響しません。
通常、財産分与の割合は2分の1ずつとされます。これは、有責配偶者であっても同じです。
例外的に考慮される場合
ただし、以下のような場合には、有責性が財産分与の額に影響することがあります。
- 有責配偶者の行為によって財産が減少した場合(浪費、ギャンブルなど)
- 慰謝料的要素を財産分与に含める場合
しかし、これらは例外的なケースであり、基本的には有責性と財産分与は別の問題として扱われます。
年金分割:原則として影響しない
年金分割とは
年金分割とは、婚姻期間中の厚生年金記録を夫婦で分割する制度です。
2つの種類
年金分割には、「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。
合意分割
話し合いや裁判所を通した手続きで、原則として2分の1を上限に按分割合を決めます。この按分割合は、夫婦の一方が有責配偶者であっても、直ちに増減が認められるものではありません。
3号分割
平成20年4月以降の第3号被保険者期間について、当然に2分の1の按分割合で年金分割の手続きができます。有責配偶者であっても、この割合は変わりません。
親権:有責性だけでは不利にならない(養育実績が重視される)
親権とは
親権とは、未成年の子どもを監護・養育し、その財産を管理する権利・義務のことです。離婚する場合、父母のどちらが親権者となるかを決める必要があります。
有責性の影響
有責配偶者であることは、親権の獲得において絶対的に不利な条件にはなりません。
親権者の決定では、有責性よりも、以下の要素が重視されます。
- これまでの養育実績(主に子どもの世話をしていたのは誰か)
- 子どもへの愛情
- 経済的な安定性
- 子どもの年齢や意思
- 養育環境(住居、学校、親族のサポートなど)
具体例
例えば、夫が不倫をした有責配偶者であっても、これまで主に子どもの世話をしてきたのが夫であり、子どもも夫との生活を望んでいる場合には、夫が親権を獲得できる可能性があります。
逆に、妻が有責配偶者でなくても、子どもとの関わりが薄かったり、経済的に不安定だったりする場合は、親権を獲得できないこともあります。
重要な原則
親権者の決定では、「子の福祉」が最優先されます。つまり、どちらの親と暮らす方が子どもにとって幸せかという観点から判断されるのです。
7. 有責配偶者に関するよくある質問
- 有責配偶者に時効はあるのか
-
有責配偶者という扱いに、時効はありません。過去に有責行為をしていたなら、何年経っても、それを理由に離婚を求めることができます。ただし、有責行為から時間が経過している場合、以下のような問題があります。
夫婦関係の修復
有責配偶者という扱いに、時効はありません。過去に有責行為をしていたなら、何年経っても、それを理由に離婚を求めることができます。ただし、有責行為から時間が経過している場合、以下のような問題があります。
有責行為から長期間が経過し、その間に夫婦関係が修復されていた場合、裁判所は「婚姻関係は破綻していない」と判断する可能性があります。
例えば、10年前に夫が一度不倫をしたが、その後は夫婦円満に暮らしてきたという場合、今になって不倫を理由に離婚を求めても、認められない可能性が高いです。
慰謝料請求の時効
有責配偶者に対する慰謝料請求には時効があります。
不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効は、以下の通りです。
- 損害及び加害者を知った時から3年
- 不法行為の時から20年
例えば、不倫を知ってから3年以上経過すると、慰謝料請求ができなくなる可能性があります。
- 双方に有責性がある場合はどうなるか
-
夫婦の双方に有責行為がある場合、その扱いは責任の程度によって異なります。
一方の責任が明らかに大きい場合
例えば、夫が先に不倫をして夫婦関係を悪化させ、その後に妻も不倫をしたというケースでは、先に不倫をした夫の有責性がより重いと判断されます。この場合、夫が有責配偶者として扱われ、夫からの離婚請求は原則として認められません。
一方、妻からの離婚請求は認められる可能性があります。
責任が同程度の場合
夫婦それぞれがほぼ同時期に不倫をしていた場合など、双方の有責性が同程度の場合は、有責性が相殺されます。この場合、どちらも有責配偶者とは扱われず、通常の離婚請求と同じ扱いになります。
ただし、双方に有責性がある場合でも、婚姻関係が破綻していると認められれば、離婚が認められる可能性があります。
- 有責配偶者でも親権は取れるか
-
有責配偶者であっても、親権を取ることは可能です。前述の通り、親権者の決定では「子の福祉」が最優先されます。有責配偶者であることは考慮要素の一つにはなりますが、決定的な要素ではありません。
実際の判断基準
- これまでの養育実績が最も重視される
- 子どもへの愛情
- 経済的な安定性
- 子どもの年齢や意思
- 養育環境
例えば、母親が不倫をした有責配偶者であっても、これまで主に子育てをしてきたのが母親であり、子どもも母親との生活を望んでいる場合には、母親が親権を獲得できる可能性が高いです。
注意すべき点
ただし、以下のようなケースでは、有責性が親権に影響することがあります。
- 不倫相手と同棲しており、子どもの養育環境として不適切である場合
- DVやネグレクト(育児放棄)があった場合
- 有責行為によって子どもに悪影響を与えている場合
- 別居期間はどのように計算すればよいのか
-
有責配偶者からの離婚が認められるための「相当の長期間の別居」をカウントする際、どの時点から計算するか、どういった態様が別居日数に計数されるか、ということが重要です。
別居開始の時点
別居期間は、夫婦が別々に生活を始めた時点から計算されます。具体的には、一方が家を出て、別々の住居で生活を始めた日が起算点となります。
カウントされる別居
- 完全に別々の住居で生活している期間
- 連絡を取り合っていない、または最小限の連絡しかない期間
カウントされない別居
以下の期間は、別居期間としてカウントされません。
- 単身赴任の期間(仕事のための別居)
- 家庭内別居の期間(同じ家に住んでいるが会話がない状態)
- 連絡を密に取り合い、定期的に会っている期間
- 一時的な別居(冷却期間としての短期別居など)
注意点
別居期間の計算は、単純に日数を数えるだけではありません。
裁判所は、以下のような点も考慮します。
- 別居の目的(離婚を前提とした別居か、修復を目指した別居か)
- 別居中の交流の有無
- 生活費の分担状況
例えば、形式的には別居していても、頻繁に行き来していたり、一緒に食事をしたりしている場合は、真の意味での別居とは認められない可能性があります。
8. まとめ
有責配偶者とは、不倫や暴力など、夫婦関係を破綻させる原因を作った配偶者のことです。有責配偶者となる主な行為には、不貞行為、悪意の遺棄、DV、モラハラなどがあります。
有責配偶者からの離婚請求は、原則として認められません。これは、自分で夫婦関係を壊しておきながら、相手の同意なく離婚を求めることは信義則に反するという考え方に基づいています。
ただし、昭和62年の最高裁判決により、一定の要件を満たせば、例外的に有責配偶者からの離婚請求も認められるようになりました。その要件は以下の3つです。
- 別居が相当の長期間に及んでいること(7〜10年以上が目安)
- 未成熟子がいないこと
- 相手が離婚により過酷な状況に置かれないこと
有責配偶者は、相手から慰謝料を請求される立場にあり、相場は30〜300万円程度です。また、有責配偶者からの婚姻費用請求は制限されますが、子どもの養育費部分については請求できます。
一方、財産分与や年金分割については、原則として有責性の影響を受けません。親権についても、有責配偶者であることが直接的な不利益になるわけではなく、これまでの養育実績や子どもへの愛情が重視されます。
配偶者の不倫や暴力で悩んでいる方、または自分が有責配偶者として離婚を求めたい方は、これらの法的な権利と制約を正しく理解した上で、適切な対応を取るためにも、弁護士など専門家に相談することをおすすめしています。
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