同性パートナーであっても不倫・不貞の慰謝料請求はできるか

同性パートナーであっても不倫・不貞の慰謝料請求はできるか

本記事の監修弁護士:鈴木 実乃里

2022年12月弁護士登録(第一東京弁護士会所属)。
都内の弁護士事務所に勤務し、B型肝炎訴訟等被害者救済を目的とした損害賠償実務等に従事。
2025年12月、ライトプレイス法律事務所に入所。
不貞事件、交通事故案件を担当。趣味はお笑い鑑賞。

この記事のまとめ

配偶者が同性と肉体関係を持った場合や、同性パートナー間の不貞行為についても、一定の条件下で慰謝料請求が可能です。東京地裁令和3年2月16日判決では、法律婚の配偶者が同性と肉体関係を持ったケースで不貞行為が認められました。

また、宇都宮地裁真岡支部令和元年9月18日判決では「内縁関係と同視できる生活関係にある」同性カップル間の不貞行為に対する慰謝料請求も認められています。

重要なのは、法律婚か事実婚かにかかわらず「婚姻共同生活の平和の維持」という法的保護に値する利益が侵害されたかどうかです。パートナーシップ制度自体には法的拘束力はありませんが、内縁関係の証明を補強する証拠として活用できます。慰謝料請求には、肉体関係の証拠、内縁や事実婚と評価できる関係の継続性、相手の故意・過失などの立証が必要となります。

目次

はじめに:多様化する恋愛関係と不貞の法的問題

近年、同性パートナーとの関係やパートナーシップ制度の利用が社会的に広く認知されるようになってきた中で、従来の異性間の不貞行為とは異なる法的課題が生じています。

配偶者が同性と肉体関係を持った場合、あるいは同性カップルの一方が浮気をした場合に、慰謝料請求は可能なのでしょうか。

不貞行為の法的定義

基本的な定義

不貞行為とは、一般的に「配偶者のある者が、配偶者以外の第三者と自由な意思で性的関係・肉体関係を持つこと」と定義されています。

従来の判例では、不貞行為における「性的関係」は異性間を前提としていることが多く、同性間の肉体関係が不貞行為に該当するかは明確ではありませんでした。

保護法益としての「婚姻共同生活の平和の維持」

不貞行為が慰謝料請求の対象となる根拠は、民法709条の不法行為です。不貞行為は、配偶者の「婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益」を侵害する行為とされています。

この保護法益の本質は、夫婦が相互に貞操を守り、平穏な婚姻生活を営む権利です。したがって、肉体関係の相手が異性か同性かという点は、本来この権利侵害の有無を判断する上で決定的な要素ではないと解釈することができます。

パターン別事案分析

パターン1:法律婚の配偶者が同性と肉体関係を持った場合

判例の動向

東京地方裁判所令和3年2月16日判決は、法律婚の配偶者が同性と肉体関係を持ったケースで、不貞行為として慰謝料の支払いを命じました。この判例は、同性間の肉体関係であっても、「婚姻共同生活の平和の維持」という法的保護に値する利益を侵害する行為として、不貞行為に該当し得ることを示しています。

慰謝料請求の要件

法律婚の配偶者が同性と肉体関係を持った場合、以下の要件を満たせば慰謝料請求が可能です。

権利侵害行為の存在

配偶者と同性の第三者との間に、性的関係・肉体関係があったことが必要です。単なる親密な交際や精神的な恋愛関係だけでは、原則として不貞行為とは認められません。

故意・過失の存在

配偶者は、自身が既婚者であることを当然認識しているため、故意が認められます。

婚姻関係が破綻していないこと

不貞行為の時点で、夫婦関係がすでに破綻していた場合、保護すべき利益が存在しないため、慰謝料請求は原則として認められません。

相手方への請求

性的関係・肉体関係を持った同性の第三者に対しても、以下の条件を満たせば慰謝料請求が可能です。

  • 相手が既婚者であることを知っていた
  • 既婚者であることを知り得る状況にあった
  • 婚姻関係が破綻していないことを把握できた
  • 不貞行為によって夫婦関係が悪化した

パターン2:同性の事実婚カップルで一方が浮気した場合

同性の事実婚カップル

宇都宮地裁真岡支部令和元年9月18日判決では、事実婚の女性カップルの一方が不貞行為をした場合について、内縁関係の男女に準じて慰謝料を請求できると判決しました。その後、最高裁にて、不貞行為をしたカップルの一方から原告の女性に110万円を支払うよう命じた1、2審判決が確定しています。

この判決により、同性カップルでも一定の場合には内縁関係に準じた法的保護の対象として、一方の不法行為に対して損害賠償を請求できることが最高裁レベルで認められたといえます。

内縁関係(事実婚)の成立要件

同性カップルが慰謝料請求を行うには、まず「事実婚(内縁関係)」が成立していることを証明する必要があります。

事実婚の要件
  • 婚姻意思の存在:お互いに夫婦として生活する意思があること
  • 共同生活の実態:実質的に夫婦同然の生活をしていること

事実婚を証明する具体的な証拠例

  • 同居の事実を示す住民票や賃貸契約書
  • 生活費の共同負担を示す通帳や領収書
  • 親族や友人が夫婦として認識していたことを示す証言
  • SNSや会社等で互いをパートナーとして公表していた事実
  • 共同での財産形成の証拠 など

パターン3:パートナーシップ制度を利用しているカップルの場合

パートナーシップ制度の法的性質

自治体が運用しているパートナーシップ制度は、同性カップルの関係を公的に証明する制度ですが、法律婚のような法的拘束力はありません。したがって、パートナーシップ制度に登録しているだけでは、法律上の婚姻関係や内縁関係が自動的に成立するわけではありません。

パートナーシップ制度を利用している方がパートナーの浮気に対して自身のパートナー、およびその浮気相手に慰謝料請求を行うためには、「事実婚(内縁関係)」の成立を別途証明する必要があると考えられます。

つまり、前述した「同性の事実婚状態」を証明できる状況や証拠が必要というわけです。

慰謝料請求に必要な証拠

肉体関係の証拠

不貞行為の立証には、性的関係・肉体関係があったことを推認させる証拠が必要です。

不貞行為に関する証拠収集については、以下の記事もご参考ください。

関係性の証拠

繰り返しになりますが、事実婚の場合、前述の内縁関係の成立を証明する証拠も必要です。

慰謝料の相場

法律婚の配偶者が同性と不貞行為をした場合

法律婚における不貞慰謝料の一般的な相場は、50万円から300万円程度です。同性との不貞行為であっても、基本的には同様の金額が適用されると考えられます。

同性の事実婚カップルの場合

内縁関係における不貞慰謝料の相場は、50万円から300万円程度とされています。法律婚の場合と比較すると、やや低額になる傾向があります。

前述の宇都宮地裁真岡支部令和元年9月18日判決では、カップルの一方に対する110万円の慰謝料が認められています。

パターン別の相場感

パターン慰謝料相場
法律婚の配偶者が同性と不貞+離婚する場合100万円~300万円
法律婚の配偶者が同性と不貞+離婚しない場合50万円~150万円
同性の事実婚カップルで不貞+関係解消する場合50万円~120万円

※記載の慰謝料額は相場であり、実際には不貞行為の態様・期間・回数や子の有無など様々な事情が考慮され、増額・減額されます。

慰謝料請求上の注意点

事実婚の立証責任

同性カップルの場合、事実婚(内縁関係)の成立を証明する責任は、慰謝料を請求する側にあります。

裁判では、相手方が内縁関係の成否について争ってくることことが想定されるため、十分な証拠を準備することが重要です。

プライバシーへの配慮

同性間の関係は、当事者が公にしていない場合も多くあります。慰謝料請求の過程で、本人の意思に反して性的指向やパートナーの存在を公表してしまうと、別の法的問題(プライバシー権の侵害など)が生じる可能性があります。

証拠収集や請求の際には、必要最小限の範囲にとどめる配慮が求められます。

弁護士への相談

同性パートナーの不貞行為の慰謝料請求については、①判例が少なく裁判所の判断が予測しにくいこと、②事実婚の立証や適法な証拠収集に専門知識が必要なことから、弁護士への相談をおすすめしています。

また、個別の事情に応じた適切な慰謝料額を算定するには、一般的な法律婚に関する不貞事件の多数の判例に関する知識が求められます。そういった点からも、お悩みの際はできるだけ早く弁護士にご相談ください。

まとめ

同性パートナーの不貞行為についても、一定の条件下で慰謝料請求が可能であることが、近時の判例によって判断されるようになってきています。

一方、同性パートナーの不貞行為に関する法的判断は、まだ発展途上の分野です。個別の事情によって判断が異なる可能性もあるため、具体的なケースについては、弁護士に相談することをおすすめします。弊所では不倫・不貞に関するご相談をLINEにて受け付けております。お悩みの方はぜひお気軽にご相談ください。

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