別居が離婚や慰謝料請求に与える影響とは?知っておくべき法的効果と注意点

別居が離婚や慰謝料請求に与える影響とは?知っておくべき法的効果と注意点

本記事の監修弁護士:鈴木 実乃里

2022年12月弁護士登録(第一東京弁護士会所属)。
都内の弁護士事務所に勤務し、B型肝炎訴訟等被害者救済を目的とした損害賠償実務等に従事。
2025年12月、ライトプレイス法律事務所に入所。
不貞事件、交通事故案件を担当。趣味はお笑い鑑賞。

この記事のまとめ

別居は、離婚手続きや慰謝料請求において極めて重要な意味を持ちます。

裁判で離婚が認められるには、原則として婚姻関係の破綻が必要であり、その判断材料として別居期間が重視されます。一般的に3〜5年以上の別居があれば、婚姻関係が破綻していると認められやすくなります。ただし、単身赴任など正当な理由がある別居は含まれず、離婚を前提とした別居である必要があります。

また、慰謝料請求への影響も見逃せません。不倫発覚後すぐに別居した場合は、精神的苦痛が大きいとして慰謝料が増額される可能性があります。逆に、不倫前から別居していた場合は、婚姻関係が既に破綻していたとして慰謝料請求そのものが認められないケースもあります。

そのほか、一方的な別居が「悪意の遺棄」となってしまう場合があることにも注意が必要です。

別居を検討する際は、タイミングや方法を慎重に判断することが重要です。

目次

別居が離婚に与える影響

婚姻関係の破綻を認定する重要な要素

裁判で離婚を求める場合、「婚姻を継続し難い重大な事由」、つまり婚姻関係が破綻していることを証明する必要があります。ここで重視されるのが別居の事実です。

法律上、夫婦には同居義務があります(民法752条)。

(同居、協力及び扶助の義務)

第七百五十二条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

この義務に反して別居している状態は、夫婦としての実態が失われていることを示す客観的な証拠となります。裁判所は、別居期間の長さや別居に至った経緯などを総合的に判断し、婚姻関係が破綻しているかどうかを見極めます。

婚姻関係の破綻については、以下の記事でも詳しく解説しています。

離婚が認められやすい別居期間の目安

では、どのくらいの期間別居すれば離婚が認められるのでしょうか。

一般的には3〜5年以上の別居が目安

5年以上別居が続いていれば、長期間の別居として婚姻関係の回復が見込めないと判断される可能性が高まります。

ただし、この期間はあくまで目安であり、同居期間との対比も重要です。たとえば結婚期間が1年で、その後1年別居している場合、同居期間と別居期間が同程度なので破綻が認められやすくなります。逆に、数十年など長期の結婚(同居)生活があった場合は、4〜5年以上の別居期間が必要となることもあります。

別居期間だけでは不十分なケース

  • 別居期間が短い場合
  • 同居を再開している場合
  • 別居していても頻繁に連絡を取り合っている場合
  • 別居しているが週末に一緒に過ごしたりしている場合

    上記のような場合は、別居期間だけでは破綻が推定されません。相手方の有責行為(暴力、暴言、家事や育児の放棄など)や、実質的に夫婦としての交流がないことを示す必要があります。

    正当な理由がある別居は含まれない

    注意点として、別居期間には「離婚を前提とした別居」のみが含まれます。仕事の都合による単身赴任、病気療養のための転地、子どもの進学に伴う一時的な別居などは、正当な理由がある別居として除外されます。

    以下のような証拠があれば、離婚を前提とした別居であると認められやすいと考えられます。

    離婚を前提とした別居であることを証明する証拠
    • 弁護士からの協議離婚申入書
    • 離婚調停申立書
    • 離婚を望んでいることが分かるメールやLINEの履歴

      別居が慰謝料請求に与える影響

      夫婦の別居が慰謝料請求に与える影響は、別居のタイミングやその態様によって異なります。

      1.不倫が発覚した後の別居

      配偶者の不倫が発覚した後すぐに別居に至った場合、精神的苦痛が大きいとして慰謝料の増額事情として考慮されます。

      不倫発覚前は夫婦関係が良好だったにもかかわらず、不倫によって別居を余儀なくされたという事実は、不倫が婚姻生活を破壊した直接的な原因であることを示すためです。

      裁判所は、不倫の回数や期間だけでなく、不倫前後の夫婦関係や婚姻生活への影響も総合的に判断します。離婚を前提とした別居に至ったという事実は、被害者の精神的苦痛が重大であることを裏付ける重要な要素となります。

      2.不倫する前からの別居

      一方、不倫が始まる前から既に別居していた場合は、慰謝料請求に不利に働く可能性があります。

      不倫前から夫婦関係が破綻し別居していた場合、法的保護に値する婚姻生活が既に存在しないとして、慰謝料請求そのものが認められないケースもあります。

      東京地方裁判所の裁判例でも、不倫時に既に別居していたことを理由に慰謝料請求が棄却された事例や、減額された事例が複数存在します。ただし、別居していても関係修復のための別居と認められる場合は、依然として守るべき婚姻関係があるとして慰謝料請求が認められることもあります。

      家庭内別居の場合の判断基準

      同居はしているものの、実質的に夫婦生活が破綻している「家庭内別居」のケースでは、慰謝料請求への影響はより複雑です。

      パターン評価
      家庭内別居中に不倫が始まった場合既に夫婦関係が破綻していたとして慰謝料請求が難しいとされています
      ・家庭内別居をする前から不倫していた場合
      ・家庭内別居中でも子育てに協力したり家族で出かけたりしていた場合
      婚姻関係が破綻していないとして慰謝料請求が可能と考えられます
      不倫によって家庭内別居に至った場合婚姻関係が破壊された程度が大きいとして慰謝料が増額される要因となる可能性があります

      家庭内別居における婚姻関係の破綻は、通常の別居よりも立証が難しく、個別の事情や状況によって慎重に判断されます。そのため、判断に迷った場合は専門家である弁護士に相談するのがよいでしょう。

      別居する際の注意点

      別居のタイミングと証拠収集

      別居には離婚における財産分与の基準時という重要な意味があります。別居時点での財産が分与の対象となるため、別居開始時期をどこと見るかが財産の分配に大きく影響します。

      また、不倫の証拠収集を考えている場合、同居中の方が証拠を集めやすいという現実もあります。別居後は配偶者の行動を把握することが困難になるため、十分な証拠を確保してから別居するという戦略も検討すべきです。

      婚姻費用の請求権も忘れずに

      別居中であっても、法律上の婚姻関係は継続しています。そのため、収入が高い方が低い方に対して婚姻費用(生活費)を支払う義務があります。

      別居する際は、婚姻費用の分担について話し合い、必要に応じて調停を申し立てることも検討しましょう。婚姻費用をきちんと受け取ることで、経済的な不安なく離婚に向けた準備を進めることができます。

      一方的な別居は「悪意の遺棄」になるリスクも

      別居を検討する際、注意すべきなのが「悪意の遺棄」です。配偶者に何も告げずに勝手に家を出ると、法律上の同居義務違反として、場合によっては自身が有責配偶者となってしまう可能性もあります。

      有責配偶者からの離婚請求は原則として認められません。つまり、不適切な方法で別居してしまうと、かえって離婚が難しくなり、慰謝料を請求されるリスクまで生じてしまうことがあるのです。

      別居する際は、正当な理由がある場合でない限り、事前に配偶者の同意を得ることが望ましいでしょう。

      条件面で有利な離婚を実現するために

      別居は、離婚を実現するための有効な手段であると同時に、方法を誤れば不利な状況を招く諸刃の剣でもあります。離婚を前提とした別居であることを明確にし、離婚調停の申立てや弁護士を通じた協議などを並行して進めることが重要です。

      配偶者の不倫を原因として離婚や慰謝料請求を検討している場合、別居のタイミングや方法は慰謝料額に大きく影響します。不倫発覚後すぐに別居すれば増額要因となる一方、不倫前からの別居は減額・免除の理由となり得るからです。

      別居を検討する際は、ご自身の状況に応じた最適な戦略を立てることが不可欠です。当事務所では、離婚や慰謝料請求に関する豊富な実績に基づき、一人ひとりの事情に合わせた適切なアドバイスを提供しています。LINE上で場所やタイミングを問わずご相談いただけますので、別居や離婚でお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。

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