GPS・位置情報アプリで収集した配偶者の位置情報は証拠になる?

GPS・位置情報アプリで収集した配偶者の位置情報は証拠になる?

本記事の監修弁護士:浅尾 耕平

2010年12月弁護士登録(第一東京弁護士会)。大阪、東京に拠点を持つ法律事務所に所属。
労働、商事関係を中心に訟務活動を担当しつつ、国際カルテル事案、企業結合審査等競争法対応、総合商社、メーカー等の一般企業法務等に従事。
2015年から、国内大手調剤・ドラッグストアチェーン企業、及びAIソフトウェア事業会社のインハウスローヤーとして、法務・コーポレートガバナンス実務を企業内から経験。

2021年ライトプレイス法律事務所共同設立。

この記事のまとめ

「配偶者の浮気を確かめたい」「証拠をつかみたい」と思ったとき、GPS機器や位置情報アプリからの位置情報を入手しても、それだけでは裁判で決定的な不倫の証拠として認められにくいのが実情です。

なぜなら、GPSの位置情報は肉体関係を直接証明するものではないため、単体では証拠価値が低いためです。本記事では、GPS証拠が裁判でどう扱われるか、そして確実に証拠能力のある証拠を集める方法を解説します。

目次

GPSでの証拠収集はそもそも問題ないのか

「配偶者の車にこっそりGPSをつけて、どこに行っているか確認したい」——そう考える方も実際はいらっしゃいますが、これは適法な行為なのでしょうか。

具体的にどのような行為が問題になるか

ケース1:車にGPS機器を取り付ける

車の所有者(名義)がご自身のものであれば、自己の所有物になりますので問題はないと思われます。車が夫婦の共有財産となっている場合でも、車を運転するのがほとんどGPSを取り付ける本人など、実質的に自己所有と同様と見ることができるなら問題ないといえます。

では、車の所有が配偶者名義となっている場合はどうでしょうか。以下の記事で解説している通り、夫婦間にもプライバシー権は存在し、保護の対象となるものの、実際に被害者である配偶者が合理的な疑いをもって、GPS機器を車に取り付けるという行為が、直ちに違法として民事上の損害賠償責任を負うことは、可能性としてはありうるものの、少ないのではないかと考えます。

なお、いずれの場合でも配偶者の同意があれば法的には問題ありません。

ケース2:カバンや持ち物にGPSを忍ばせる

こちらも、他人の所有物であるためプライバシー侵害を問われる可能性はありますが、ケース1と同様そのパターンは少ないかと思います。

ケース3:スマホに無断でGPS追跡アプリをインストール

配偶者のスマートフォンは他人の所有物です。配偶者からスマホのパスワードを共有されているような場合では無断とは言えないかもしれません。

とはいえ、GPSアプリを勝手にインストールすることは配偶者も想定していないでしょうから、「配偶者からパスワードを教えられたのでスマホを勝手に自己のもののように取り扱ってよい、という黙示の許可があった」、というふうに考えるのは少し無理があるように思われます。

そのため可能であれば、配偶者の許諾を得るべきでしょう。 他方で、配偶者の許諾を得ずにインストールしたアプリから得たGPSのデータが裁判等で全く使えないのかは別問題です。日本の裁判では、取得経路に多少問題があるデータであっても、有効な証拠となる可能性は十分あり得る、というのが実際のところです。後述します。

ケース4:浮気相手の車や自宅にGPSを設置

配偶者ではなく、浮気相手の所有物や私有地を対象とした場合です。

こちらは、明確に他人の所有物ですので、仮に不貞の合理的な疑いをもってGPS機器等を設置したとしても、プライバシー侵害に加え、刑事罰である住居侵入罪に該当する可能性がありますので避けましょう

上記のいずれのケースでも、GPS機器を用いた証拠収集は慎重に行うべきです。

GPSによる位置情報は裁判でどう扱われるのか

ここが最も重要なポイントです。 「違法だとしても、証拠さえ押さえれば裁判で勝てるのでは?」 そのように考える方もいるでしょう。実際のところ、GPSにて取得した証拠は裁判でどう扱われるのでしょうか。

民事裁判では違法証拠も使える?

民事訴訟では、刑事裁判ほど証拠収集の方法を厳しく問われません。刑事裁判では違法収集証拠排除法則というルールがあります。これは「違法に収集した証拠は裁判上の証拠として認めない」という原則です。その趣旨は、(様々議論がありますが)裁判所が警察・検察の違法な捜査を容認・追認するわけにはいかない、ということにあります。

他方、民事裁判では、そのような厳格なルールはなく、違法に収集された証拠であってもそれだけで証拠能力が否定される、ということはありません。もっとも、そのような証拠を採用することが、訴訟上の信義則に反するような場合には、証拠能力を否定する、ということになっています。

そのため、取得した方法に問題がある証拠でも、裁判所が採用する可能性はあります。実際、GPSの位置情報について、裁判所は「証拠として使えるか」という観点から、ケースバイケースで判断しています。

裁判所が証拠採用を拒否する基準

もちろん、どんな証拠でも認められるわけではありません。

裁判所は証拠収集の方法の違法性がどれだけ高いかが重要です。たとえば以下のような場合、証拠採用が拒否される可能性が高まると考えられます。

  • 他人の家に無断で侵入してGPSを設置した
  • 長期間にわたって執拗に監視を続けた
  • 相手の私生活を著しく侵害する方法で情報を取得した

逆に、違法性が比較的低い場合は、証拠として採用される可能性もゼロではありません。

GPSによる位置情報だけでは不倫を証明できない?

仮にGPSによる位置情報が証拠が裁判で採用されたとしても、もう一つ大きな問題があります。それは、GPS位置情報だけでは不倫の事実を証明できないということです。

不倫の証拠として必要なもの

不倫の慰謝料請求で裁判所が認める「不貞行為」とは、配偶者が自由意思に基づいて不倫相手と肉体関係を持ったことを指します。つまり、「肉体関係があった」ことを証明できる証拠が必要なのです。

以前こちらの記事で解説したように、裁判で有効とされる証拠の例は以下のようなものです。

  • ラブホテルに2人で出入りする写真・動画(顔がはっきり写っているもの)
  • 不倫相手の自宅に宿泊していることが分かる写真・動画(夜に入って朝に出てくる場面など)
  • 性行為を認める音声データや自白
  • 性的な内容が明確なメールやLINEのやり取り
  • 妊娠や中絶に関する資料(エコー写真、診療明細書など)

上記のような証拠は自身のパートナーと相手方とで「肉体関係があった」ことを推認できる証拠であり、裁判所もその証拠能力を認める場合が多いでしょう。

位置情報の限界

では、位置情報のみでは何が証明できないのでしょうか。

位置の特定が不正確

例えば、GPSで、配偶者の位置情報が「午後8時、○○ラブホテル付近」を示していても、以下のような反論が可能です。

  • 「GPSには誤差がある。実際にはその場所にいなかった」
  • 「近くのレストランに行っただけで、ラブホテルには入っていない」
  • 「その時間は別の用事で近くにいただけ」

実際、GPS機器に誤差はあるものです。そのため、「確実にそこにいた」とは言い切れないのです。

誰と一緒だったかが証明できない

また仮にGPSで配偶者の位置が特定できても、「不倫相手と一緒にいた」ことは証明できません。

  • 「車を友人に貸していた」
  • 「仕事の取引先と会っていた」
  • 「一人で食事をしていた」

こうした言い訳を覆すことができないのです。

肉体関係の証明にならない

さらに重要なのは、たとえラブホテルの位置情報があっても、それだけでは「肉体関係があった」とは証明できない点です。

  • 「話をしただけで、何もなかった」
  • 「相手に呼び出されて説得しに行っただけ」

このような主張を否定することができません。

GPS情報は補助的な証拠でしかない

結局、GPS位置情報は、他の決定的な証拠と組み合わせて初めて意味を持つ「補助的な証拠」でしかありません。

たとえば、探偵による調査でラブホテルへの出入りを撮影した写真があり、その日時をGPS情報が裏付ける——このような使い方であれば有効でしょう。しかし、位置情報単体では不倫を証明する証拠としては弱いのです。

不貞を証明する証拠を集める方法

1. 自分でできる証拠収集

方法内容
会話の録音配偶者との会話を録音するのは合法です。自分が当事者である会話を録音することは、盗聴には当たりません。不倫について話し合う際、さりげなく録音しておくことで、相手が不倫を認める発言を証拠として残せます。
メールやLINEの保存夫婦で共有しているパソコンに届いたメールや、スマホの画面に表示されていたLINEのやり取りは、スクリーンショットで保存しても問題ありません。
クレジットカードの明細・レシート家計を管理している立場であれば、クレジットカードの利用明細を確認するのは自然な行為です。ラブホテルや宿泊施設、不自然な場所での食事の記録などは、他の証拠と組み合わせることで有効な証拠になります。
日記やメモをつける配偶者の帰宅時間、服装の変化、香水の匂い、行動の不自然な点などを日付とともに記録しておくことも効果的です。

2. 探偵事務所に依頼する

自分で証拠を集めるのが難しい、あるいは確実な証拠が欲しい場合は、探偵事務所への依頼を検討してもよいかもしれません。

探偵が合法的にできること

公安委員会の認可を受けた探偵事務所は、探偵業法に基づいて以下の調査を合法的に行えます。

  • 尾行調査(配偶者の行動を追跡)
  • 張り込み(ラブホテルや不倫相手の自宅前で待機)
  • 撮影(ラブホテルへの出入りや不倫相手との接触場面)

探偵の調査報告書は裁判で強力な証拠になる

探偵が作成する調査報告書には、以下の情報が詳細に記録されます。

  • いつ、どこで、誰と会ったか
  • ラブホテルへの出入り時刻(写真付き)
  • 不倫相手の身元情報(氏名、住所、勤務先など)

この報告書は、第三者である専門家が作成した客観的な証拠として、裁判でも高い信用性が認められます。

費用を抑えるコツ

探偵費用は安くても10万円程度、高い場合には100万円を超えることも少なくありません。費用を抑えるには、事前に自分で以下の情報を集めておくと良いでしょう。

  • 配偶者が不倫相手と会いそうな日時
  • よく行く場所
  • 不倫相手の情報(車のナンバー、勤務先など)

これらの情報があれば、探偵の調査時間を短縮でき、費用を抑えられます。

専門家に相談するという選択肢

弁護士に相談するメリット

弁護士に相談すれば、以下のようなサポートが受けられます。

今ある証拠の証拠能力を判断してくれる

「このLINEのやり取りだけで慰謝料請求できますか?」「どんな証拠を集めればいいですか?」といった具体的なアドバイスがもらえます。GPS証拠のように、違法性のリスクや証拠能力の問題がある証拠を使おうとしている場合、その危険性を指摘してくれます。

弁護士会照会で不倫相手の情報を調べられる

例えば、電話番号だけ分かっている場合、弁護士が「23条照会」という制度を使って、電話会社から不倫相手の氏名や住所を調べることができます。このような調査は個人や探偵ではできません。

慰謝料請求の交渉を代わりにしてくれる

証拠が揃った後、配偶者や不倫相手との交渉を弁護士に任せられます。感情的にならずに冷静に進められるため、有利な条件を引き出しやすくなります。

最後に:証拠能力のある証拠を

「配偶者を信じたいけど、疑いが消えない」「どうしていいか分からない」——そんな不安を抱えながら一人で悩み続けるのはつらいものです。

不倫の証拠をどのように集めればよいかわからない場合は、まずは法律の専門家である弁護士に相談してみてください。あなたの状況に応じた、最適で合法的な解決方法を一緒に考えます。

配偶者の不倫で傷ついたあなたが、さらに法的トラブルに巻き込まれることのないよう、正しい方法で証拠を集め、正当な権利を主張していきましょう。

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