
本記事の監修弁護士:浅尾 耕平
2010年12月弁護士登録(第一東京弁護士会)。大阪、東京に拠点を持つ法律事務所に所属。
労働、商事関係を中心に訟務活動を担当しつつ、国際カルテル事案、企業結合審査等競争法対応、総合商社、メーカー等の一般企業法務等に従事。
2015年から、国内大手調剤・ドラッグストアチェーン企業、及びAIソフトウェア事業会社のインハウスローヤーとして、法務・コーポレートガバナンス実務を企業内から経験。
2021年ライトプレイス法律事務所共同設立。
婚約中の浮気でも、きちんとした婚約関係があれば慰謝料請求は十分可能です。「まだ結婚していないから無理」と諦める必要はありません。
ただし、「結婚しようね」といった単なる口約束だけでは難しく、婚約指輪や結納、結婚式場の予約など、客観的に「婚約している」と分かる証拠が必要です。
婚約の場合でも、おおよそ50万円〜200万円程度が慰謝料の相場ですが、婚約期間や浮気の悪質さによって変わります。
また、浮気した婚約相手だけでなく、浮気相手からも慰謝料を取れる場合があります。大切なのは証拠をしっかり集めて、早めに専門家に相談することです。
婚約でも慰謝料は請求できる?
結婚を約束していたパートナーに浮気をされて、慰謝料を請求したい…でも結婚していないから無理なのでは?と考えている方も多いのではないでしょうか。
実は、婚約関係にあった場合でも、慰謝料請求できる場合があります。
まずは、あなたの状況を整理してみましょう。以下のような事情があった場合、慰謝料請求できる可能性が出てきます。
- 婚約指輪をもらった、またはお互いに交換した
- 両親に挨拶をした、家族ぐるみのお付き合いがあった
- 結婚式場を見学したり、具体的な結婚準備を進めていた
- すでに新婚旅行の旅程が決まっており、予約をしている
- 結納を交わした
- 長期間(目安としては3年以上)、同棲していた
「本当に婚約していた」と認めてもらうには?
なぜ「口約束」だけでは通用しないのか?
「将来結婚しようね」「いつか一緒になろう」という言葉だけでは、残念ながら法的な婚約とは認められません。恋人同士なら誰でも言うような言葉であり、客観的な婚約の証明にならないためです。
裁判所に認めてもらうためには、「婚約している状況が客観的に分かる証拠」が必要なのです。
婚約に関する証拠の例
- 婚約指輪(購入レシートや写真も重要)
- 結納の写真や関連書類
- 結婚式場の契約書や見積書
- 両家顔合わせの写真
- 同棲していた賃貸契約書(連名になっているか)
- 職場や友人に「婚約者」として紹介されていた証言 など
慰謝料の相場は?いくら請求できる?
婚約中の不貞慰謝料の相場
婚約中の浮気で実際に支払われている慰謝料は、50万円から200万円程度が一般的です。「思ったより少ない」と感じるかもしれません。
結婚している夫婦の場合と比べると、婚約関係はまだ「将来の約束」という位置づけのため、どうしても金額は控えめになる傾向にあります。しかし、状況によっては、上記の相場より高額になることも可能性としてはあります。
どのような場合に金額は増減する?
基本的に、婚約者の浮気の悪質性の度合いによる
婚約者の浮気の態様が以下のような場合は悪質性が高いと判断され、慰謝料は増額する傾向にあります。
増額される傾向にある事情
- 複数の相手と同時に関係を持っていた
- 長期間にわたって浮気していた
- 妊娠中に相手が浮気をしていた
- 浮気相手を妊娠させてしまっている
- 浮気相手にも結婚・婚約していないと嘘をついていた
婚約者の浮気の悪質性に言及しましたが、他にも、慰謝料額の増減には様々な考慮要素があります。まずは弁護士などの専門家に相談して、どれくらいの慰謝料額が見込めるか聞いてみるのがよいでしょう。
なお、不貞行為の慰謝料額の相場は以下の記事でも詳しく解説しております。

慰謝料だけでなく、実際に発生した損害も請求できる
結婚することを前提に支出した費用等は、婚約破棄によって被った損害となりえます。そのため、慰謝料以外にも経済的損害がある場合には、これも併せて請求できます。典型的には以下のようなものです。
- 結婚式の費用(挙式していた場合はその費用、取りやめになったときはキャンセル代など)
- 結婚指輪の購入費用
- 結婚のための引越し費用
- 家財道具の購入費用
- 結婚のため退職した場合の収入の減少分
慰謝料請求は婚約破棄が前提
婚約中に浮気はあったけれども結局結婚した、という場合には、基本的に慰謝料請求は認められないと考えられます。基本的には、婚約という約束が不倫により果たせなくなってしまった、ということが損害賠償請求の前提となるためです。
この点は、仮に離婚しなくても不倫があったら慰謝料が成立する婚姻関係の場合とは異なると考えられています。
浮気相手にも責任を取らせることができる場合もある
浮気した本人だけじゃない!
浮気をした婚約者本人はもちろんですが、実は浮気相手にも慰謝料を請求できる場合があります。「知らなかった」では済まされないケースが多いんです。
ただし、どのような場合に浮気相手に慰謝料請求できるか、は裁判例上も確定的な判断がありません。裁判例では、浮気相手が、婚約を知っていただけでは足りず、婚約を積極的に破棄させることを目的として浮気に誘ったという悪質な事情がある場合のみ、慰謝料請求を認られる、という判断もあります。これも、婚姻関係を知らなくても、知ることができただけで慰謝料請求が原則として認められる婚姻関係における不貞相手とは異なる点です。
この点は、かなり具体的な事情によって対応を検討する必要があります。証拠とともに、弁護士に請求の可能性について相談してみましょう。
逆に、付き合っていた相手が既婚者だったケースもあるかと思います。そちらについては以下の記事で解説しています。

浮気相手が婚約を知ることができたことが必要
いずれにせよ、婚約関係を知ることができなかった場合には、浮気相手に慰謝料請求が認められることはありません。まずは、以下のような事情があるかを確認する必要があります。
浮気相手が婚約関係を知ることができたと評価しうる事情
- 直接「婚約している」と聞いていた
- 婚約指輪をつけているのを見ていた
- SNSで婚約報告を見ていた
- 共通の友人から聞いていた
今すぐやるべき証拠集めと注意点
まずは冷静に、でも迅速に
感情的になるのは当然ですが、慰謝料請求を成功させるには冷静な証拠集めが必要です。以下の順番で進めましょう。
- 写真、動画をスマホやクラウドにバックアップ
- 書類やメール、LINEのスクリーンショット
- 家族や友人に証言をお願いする準備
- 相手が否定する前に、可能な限り証拠を保全
- スマホの履歴、レシート、写真など
- 浮気を認める発言があれば録音
証拠集めで絶対にやってはいけないこと
- 浮気相手の家に押しかける
- SNSで事実を拡散する
- 暴力的な方法で相手を問い詰める
これらは逆にあなたが法的に不利になったり、逆に不法行為の加害者として慰謝料請求を受けてしまう恐れのある行為です。絶対にやめましょう。
なお、証拠収集については以下の記事でも解説しています。

まとめ:婚約中の浮気でも慰謝料請求は可能!困ったらすぐに相談を!
ここまで、婚約している場合の不倫・浮気の場合の慰謝料請求について解説してきました。もうすぐ結婚できる、という幸せの中で婚約者の浮気によって関係が破綻したときの苦悩は筆舌に尽くしがたいものです。
金銭で解決できる問題ではないかもしれませんが、辛い経験を無駄にしないためにも、そして新しいスタートを切るためにも、正当な権利があることを忘れないでください。
何をしていいのかわからなかったり、困ったことがあればまずは専門家である弁護士に相談し、解決への道を歩んでいきましょう。
弊所ではLINEにて不倫・不貞のご相談を承っています。正式にご依頼いただくまでは、ご相談は基本的に無料でおこなっていただけますので、ぜひお気軽にご相談ください。